2017 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of Phylogenetic Status and Natural History from Museum Specimen of the Extinct Japanese Otter
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17K15177
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
和久 大介 東京農業大学, 農学部, 助教 (60793578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ニホンカワウソ / 博物館標本 / 対馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、新たな試料収集と対馬で発見されたカワウソのDNA解析をおこなった。北海道の試料については、新たに1試料を収集した。これにより、北海道産のニホンカワウソLutra lutra whiteleyiと考えられる試料数が増え、北海道集団の系統解明に期待が持てるようになった。現状では、北海道産2個体、本州産5個体、四国産4個体分の試料を収集したことになる。加えて、北海道、四国で新たにニホンカワウソ標本の所蔵情報を得た。これらの標本からサンプリングができれば北海道産個体が3個体以上に、四国産も5個体以上にできる。このように、当初の予定よりも多くの試料を収集できる可能性があり、今後の解析においてコンタミネーションが激しく解析できない個体が出たとしても他の個体にエフォートを充て解析することで、それぞれの地域の系統を明らかにすることができるだろう。 また、当該年度には対馬でカワウソが発見された。本研究の実施者もこのカワウソの正体を明らかにすべく、調査・検証に携らせていただいた。対馬で採取されたカワウソの糞からミトコンドリアDNA配列を決定し、分子系統樹を推定した。その結果は環境省の記者会見で発表され、報道資料としてホームページ上で公表されている。対馬のカワウソは系統樹上で韓国・サハリン系統であった。この結果は、対馬の動植物の多くが韓国など大陸の系統であることと矛盾しない結果だった。今回の対馬での発見は日本列島におけるカワウソ集団の形成史を解き明かす上で、非常に意義深いものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は対馬でカワウソが発見され、その調査や検証にエフォートを割いた。当初計画では剥製標本等の試料から次世代シーケンサーによる解析を予定していたが、本研究で試料を収集できていなかった対馬(九州)から試料を入手し、解析できたことは重要な進展である。また、次世代シーケンサーの解析についても、剥製標本等の試料をまとめて解析するため、大きな障壁ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに所蔵を確認したニホンカワウソ標本からの試料収集を進める。各地域で3個体以上の試料を目標とする。目標個体数を確保し次第、次世代シーケンサーでの解析に移る。以降は当初の計画通り、抽出したDNAから直接DNAライブラリを作成し、次世代シーケンサーで解析する。十分なリード数を得られた試料は以降の解析から外す。十分なリード数を得られなかった試料はカスタムビーズを用いて、目的のDNAをキャプチャし、キャプチャしたDNAからDNAライブラリを作成・解析する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は対馬で発見されたカワウソのDNA解析にエフォートを割いた。このことから当初予定していた次世代シーケンサーによる博物館標本の試料解析を行わなかった。これはエフォート面もあるが、コンタミネーションを避けるためにも重要な事柄であった。一方で、この遅れは十分に取り戻せるもので、平成30年度以降に当初の予定通り実験を進めていく。このため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)