2017 Fiscal Year Research-status Report
酵母のフェロモン/受容体の新しい組み合わせができる分子メカニズム
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17K15181
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
清家 泰介 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 特別研究員(PD) (80760842)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / フェロモン / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫・両生類、酵母といった微生物まで、多くの生物では体外に性フェロモンと呼ばれる物質を分泌して異性と交配している。通常、フェロモンとその受容体間の認識は厳密であり、フェロモンの構造が変化すると受容体とは結合できずに、異性との交配が妨げられる結果になる。そのため、自然界ではフェロモンと受容体の新しい組み合わせがどのように生じるのかはよく分かっていない。そこで、平成29年度では、世界中から単離された野生の分裂酵母150株において、フェロモンと受容体遺伝子の解析を行い、多様性を調査した。その結果、面白いことにM型フェロモンとその受容体にはアミノ酸配列を変えるような変異は入っておらず、実験室株のものと完全に同じであった。その一方で、P型フェロモンとその受容体にはアミノ酸を変えるような変異が多く蓄積しており、極めて多様化していた。P型フェロモンは1つの遺伝子座内でコード領域が重複しているが、多くの株でコピー数が変動しており、様々な種類のフェロモンが同時に生産されていた。アミノ酸のわずかな違いによる機能の変化を調べたところ、交配時の細胞応答に顕著な活性の違いが生じた。以上の結果から、自然界では分裂酵母の2種類のフェロモンが、非対称的に多様化しているということを見出した。以上の結果から、酵母の交配がフェロモンの厳密な機構と、柔軟な機構から成立していることが分かってきた。平成30年度では、引き続き、この生物学的意義について解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、分裂酵母の野生株150株からゲノムを抽出し、フェロモン及び受容体遺伝子の一次配列を全て決定することができた。その結果、自然界には実験室株で見られないフェロモンを作る酵母が多数いることが分かった。さらに本年度中に、それぞれのフェロモン活性を調べることもできた。酵母のフェロモンと受容体の共進化の実態が分かりつつあり、本研究は非常に実りのあるものになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も引き続き、フェロモンと受容体の共進化の解析により、新しい組み合わせができるメカニズムに迫る。本研究の結果は、すでに論文としてまとめつつあるので、本年度中に公表を目指す。また研究代表者は、この4月に遺伝研から理研に異動し、研究をする環境が変化した。そのため、必要な機材や試薬などを新たに購入し、本研究課題を円滑に遂行するための準備を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度以降に実施する研究を異動先で円滑に行うために、平成29年度に予定していた使用を最低限に留めた。差額分は、理研での研究スタートの準備に必要な経費に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)