2017 Fiscal Year Research-status Report
Evolution of biological clock in a 6-year periodical mass-flowering plant, Strobilanthes flexicaulis
Project/Area Number |
17K15182
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
柿嶋 聡 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 支援研究員 (30648580)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 一斉開花 / 一回繁殖 / 多回繁殖 / 周期植物 / 生物時計 / 生活史 / 分子系統 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の中には、タケの仲間のように、集団が1年を越える一定の周期で一斉開花枯死する生活史をもつ植物(周期植物)がある。このような周期植物は、数年から数十年という特定の周期で一斉に繁殖・死亡を繰り返すことから、2年以上の長い時間を測ることができると考えられる。しかし、数年から数十年という長期間の調査を必要とすることから、その進化メカニズムは未解明の点が多い。そこで、沖縄本島で発芽から6年目に一斉開花し枯れるキツネノマゴ科イセハナビ属コダチスズムシソウの生物時計の進化を明らかとするため、野外調査により他地域のコダチスズムシソウや近縁種の繁殖様式を明らかにするとともに、分子系統解析を行った。その結果、コダチスズムシソウは多回繁殖型の多年草から一回繁殖型の多年草を経て、一斉開花型となっていることが推定された。この成果については、現在論文投稿を行っている。一方で、多回繁殖型が見られる台湾の中でも、数年間にわたり開花が見られない集団があり、一斉開花型が生育している可能性があることが示唆された。また、台湾では同属の別種において、一斉開花が初めて観察された。この種類はヒマラヤ西部で一斉開花の報告があるものの、中国では一斉開花しないとされており、台湾では初の繁殖様式の報告となる。さらに、周期生物の周期的一斉繁殖の進化に関する共通メカニズムを解明するため、周期ゼミに関する研究を行い、周期ゼミの3つのグループそれぞれのおいて、13年ゼミと17年ゼミが遺伝子流動が生じながらも、周期が維持されていることが明らかになるとともに、それぞれのグループ内では、13年ゼミと17年ゼミの遺伝的分化は小さく、周期特異的な変異は見られないことが明らかとなった。この成果については、Communications Biology誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄本島で6年周期で一斉開花枯死するコダチスズムシソウの繁殖様式の進化過程の概要を解明した。さらに詳細な進化過程を推定するための野外調査を進め、台湾で新たな一斉開花や一斉開花が生じる可能性のある種類・集団を発見することに成功した。このように、コダチスズムシソウの生物時計の進化メカニズムの解明はおおむね予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
コダチスズムシソウの生物時計の進化メカニズムの解明のため、引き続き琉球列島および台湾において野外調査を行うとともに、RAD-seqを用いた分子系統解析や集団遺伝学的な解析を新たに行う予定である。さらに、野外調査で得られたデータをもとに理論的な解析により、周期的な一斉開花の進化要因を検証していく。
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