2019 Fiscal Year Annual Research Report
Cultivation, isolation and characterization of yet-uncultivated microorganisms dominated in sedimentary environments
Project/Area Number |
17K15183
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
片山 泰樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (40549896)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 微生物 / 堆積物環境 / 新門候補 / 未培養 / メタン / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、堆積物環境に優占する微生物群、特に、分類階級”門”レベルで未培養の系統群について、実験室での培養とオミクス技術を用いた遺伝子解析を通じて、生理機能や生態学的な役割、生物進化の解明を進めてきた。当初純粋培養を目標としたアーキア群については、優占度および純度の高い培養系の確立に成功した。メタゲノム・メタトランスクリプトーム解析、および、安定同位体ラベル基質を用いた脂質分析によって、この系統群が持つ代謝機能が明らかとなり、還元的アセチルCoA経路が本系統群を含むアーキアに広く存在・機能し得る可能性と、本系統群が堆積物環境に広く存在する芳香族化合物の分解およびメタン生成に重要な役割を担う可能性が強く示唆された。 また、本研究を通じて、海洋堆積物など嫌気環境に普遍かつ優占的な未培養バクテリア新門候補Atribacteriaの純粋培養に成功した。クライオ電子顕微鏡を含む顕微鏡観察の結果、本菌株の細胞は、一般的なグラム陰性型の外膜・内膜に加えて、核様体を包む細胞内膜を有することが明らかとなり、原核生物細胞構造の常識を覆す新たな発見となった。また、DNAポリメラーゼやFtsZ、ヒドロゲナーゼなど、生命活動の中核を担う遺伝子のいくつかには、他の菌には認められない、N末端にシグナル様の20-50塩基の余剰配列が存在していることが明らかとなり、本菌株の複雑な細胞構造を制御するために必要な特徴と推察された。本菌株は単糖を資化する絶対嫌気性の桿菌で、主要な代謝産物は酢酸、水素、二酸化炭素であった。単独で増殖することは可能だが、水素利用性メタン生成菌との強い共生を示した。電子伝達系を担う遺伝子群は発酵型細菌よりも共生型細菌に似通っていた。これらの特徴は、この未培養新門が発酵や共生が好まれる嫌気環境に広く分布していることと調和的であった。
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