2018 Fiscal Year Annual Research Report
The effect of the loss of flight on latitudinal gradient in beetle diversity
Project/Area Number |
17K15189
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
池田 紘士 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00508880)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 甲虫 / 遺伝分化 / 遺伝子浸透 |
Outline of Annual Research Achievements |
春から夏にかけて、これまでの調査で不足していた地域を中心に、北海道から中部地域にかけて採集を行い、解析に十分なサンプルを得ることができた。ブナ林に生息するジョウカイボン科9種について、ミトコンドリアのCOI領域と核のWg領域で系統樹を構築した。その結果、そのうちの2種において、東北地方北部の一部の地域から得られた個体に関し、COIのハプロタイプが種間で完全に一致したが、それ以外の地域ではそのような傾向はみられなかった。また、Wg領域についてはそのような傾向はみられなかった。このことから、これらの種間では、一部の地域において交雑に伴うミトコンドリアの遺伝子浸透が生じていることが明らかになった。東北地方では現在はブナ林は連続的だが、氷期にはごく限られた逃避地に隔離的に存在していたことがわかっており、過去における生息環境の不連続な分布が種分化に寄与していると考えられる。これらの結果は、たとえ現在の分布が連続的であっても、過去の生息環境の不連続性に伴う隔離が十分であれば、進化や種分化をもたらすことを示している。また、水生の甲虫として、ゲンゴロウ科のメススジゲンゴロウに関し、ミトコンドリアのCOI領域と核のCAD領域を用いて系統樹の構築を行ったところ、信頼性の高い系統樹を得ることができ、北海道と本州の2つの集団に大きく分かれることがわかった。さらに遺伝子データをもとに集団間の遺伝分化を北海道と本州で比較したところ、北海道のほうが集団間で遺伝的に分化していた。このことは、水生の甲虫では生息する水場の不連続性が集団間の分化に影響するが、水場環境の不連続性自体は緯度に対応して変わるわけではないため、低緯度のほうが集団間で遺伝的に分化しやすいという緯度に対応した遺伝分化のパターンは必ずしもみられないことがわかった。
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