2018 Fiscal Year Research-status Report
個体の代替生活史意思決定が個体群に波及する効果の解析:データ駆動型モデリング
Project/Area Number |
17K15197
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
立木 佑弥 首都大学東京, 理学研究科, 助教 (40741799)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 代替生活史戦術 / 数理モデル / 進化生態フィードバック / 個体群動態 / 環境変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度進めた以下の研究が学術論文として掲載された: サケ科魚類をモデルとし、代替生活史戦術を考慮した河川個体群相互作用の数理モデルを構築した。河川に残留して性成熟する残留型と、海洋での摂餌回遊を経験する降海型という戦術を分かつサイズ閾値を仮定した。閾値モデルを採用し、河川での資源を巡る密度依存的な競争効果が生活史戦術二型の頻度に与える影響について生態学的側面および、閾値の進化を考慮した、生態進化動態モデルを解析した。その結果、生物学的に現実的なパラメータ範囲において、二型頻度の振動解や安定解がパラメータ依存的に分岐すること、および、進化の最終状態となる閾値が複数出現し、初期値依存的な双安定性を持ちうることを示した。 今年度は、上述のモデルを拡張し、気候変動による環境の一方向的な変化を想定した状況下において、生活史二型のサイズ閾値に注目して、進化生態的な動態の変化を解析した。 その結果、進化の速さと環境変化の速さのバランスにより動態が大きく2つに分かれることを見出した。進化の速さが十分に速い場合、言い換えれば環境変化十分にゆっくりしている場合には、環境変化時は進化的に安定となる閾値からわずかに逸脱した閾値をもつことがわかった。この場合環境変化が系に与える影響は限定的であり、生態的な動態は大きく変化せず、環境変化が止むと変化前と変わらない生態的状態を維持する。一方、環境変化が速すぎる場合には、環境変化によって進化的に安定な閾値から大きく逸脱し、生態的な動態が質的に変化しうることがわかった。例えば二型が安定に維持されていたにもかかわらず、環境変動によって大きな年変動がもたらされる可能性がある。また、進化的に安定な閾値が軽いつ空間に複数存在する場合には形質が不可逆的に推移し、環境変動が終了しても、元の状態に戻らない可能性があった。本成果は現在、学術誌に投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の成果が論文として発表されたが、本年進めた環境変化に対する進化的生態的応答を解析する理論的フレームワークの構築にはやや遅れがあり成果論文の出版には至っていない。 一方で、本研究に対して、共同研究により新たな実証実験の展開が見られそうであり、予想していなかった成果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、2年間で生態学的な理論構築は十分に進んだと言える。そこで、これまで理想的な状況を想定し構築さた数理モデルをより現実的な状況に当てはめるための具体化を経て実証研究との融合を図る。具体的な実証研究と連携し、個体の意思決定という行動および生理学的な側面をパラメータ化することで、上位階層である個体群への波及効果を見積もる。
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Causes of Carryover |
物品費に係る経費が減少したことに加え、当初予定に比べて、データ整理に関するアルバイト謝金として予定していた人件費が小さくなった。人件費は次年度の計画に繰り越した。
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Research Products
(7 results)