2019 Fiscal Year Research-status Report
Trait-based approach to understand forest community throughout life history
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17K15201
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
飯田 佳子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40773479)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機能形質 / 成長率 / 死亡率 / 照葉樹林 |
Outline of Annual Research Achievements |
1989年に綾リサーチサイト(宮崎県綾町)に設置された4 haの調査区の出現樹種の稚樹と成木から葉と材のサンプルを採取した。稚樹(1cm < 胸高直径 < 4cm)および成木(胸高直径 > 5cm)のサンプリングは主に綾リサーチサイト近くの林縁及び林内で行った。昨年度までに稚樹44樹種と成木10樹種の形質測定を終えた。個葉の形質としては、葉面積比(SLA)、厚さ、硬さ、含水量を測定した。材サンプルからは材密度を測定した。当年度は、成木24樹種の形質を新たに測定した。また、1989年から2017年までの幹直径の長期観測データを整理して、成長率と生存率の関係を調べるためのモデルを構築した。 稚樹と成木の形質データを測定した共通樹種のうち、成長と生存の解析に用いることのできる2調査区間(約4年間)ののべ個体数が30個体以上の28樹種を抽出した。これらの樹種において、稚樹と成木での形質の関係を調べたところ、7種類の形質すべてにおいて、有意な正の相関がみられた。よって、各形質において、生育段階で種のランクは変化しないことが分かった。次に形質と葉タイプの違い(落葉性か常緑性か)に対して主成分分析を行った。稚樹においては、第1軸が比葉面積、葉の硬さや厚さと関連し、46.6%を説明し、第2軸が個葉面積や乾物含量と関連し、25.5%を説明した。成木においては、第1軸が比葉面積や乾物含量と関連し、41%を説明し、第2軸が材密度や葉の厚さと関連して、30.7%を説明した。よって、各形質の樹種ランクは生育段階の違いでは大きく変化しないものの、形質間の関係自体は変化することが明らかになった。また、これらの関係が動態特性や分布などどのように関連するかを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、宮崎県綾町にある照葉樹林を対象としており、1年目と2年目にかけて野外サンプリング調査を遂行する予定であった。葉のサンプリングは展葉時期と落葉時期を避けて行わなければならないが、サンプリング調査に適当な時期には台風襲来が多く、特に平成30年度の夏の調査は台風19号と20号により、調査自体をキャンセルせざるを得ず、平成31年度の夏まで調査を延期し、1年遅れで平成31年度に野外調査を完了した。また、化学分析に必要なヘリウムガスが入手困難であり、化学分析も遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、上記の通り、台風による野外調査の遅延、また、ヘリウムガスの世界的な枯渇による化学分析の遅延により、研究期間を1年延長した。今後は、1.動態特性を定量化するためのセンサスデータの整理及び継続調査、2.形質サンプルの化学分析、3.形質データと動態特性の関係の検討、4.成果の論文執筆を順に行う予定である。
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Causes of Carryover |
台風や豪雨により、綾長期観察試験地のセンサス調査が昨年度は行われなかったため、その予算を今年度に繰り越すことになった。また、形質調査の野外調査が一年遅延し、昨年度完了し、化学分析に必要なサンプルの準備が遅れ、さらに、ヘリウムガスが入手困難になったため、化学分析が開始できず、その予算を今年度に繰り越すことになった。今年度は、これらの繰り越した予算を用い、綾試験地のセンサス調査を行い、葉と材のサンプルの化学分析を進める予定である。
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