2020 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring evolutionary history of great apes and humans by means of metameric variation in molars
Project/Area Number |
17K15202
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
森田 航 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (20737358)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 類人猿 / 進化 / 大臼歯形態 / エナメル象牙境 / 形態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度発表した上顎大臼歯間の形態変異の解析により、ヒトと現生類人猿は共通する変異パターンを持ちつつも、ヒトでは特有の形状変異パターン、遠心舌側咬頭(ハイポコーン)の顕著な退縮を示すことがわかった。ヒトとチンパンジーの系統が中新世末期に分岐して以降、ヒトの系統では、アウストラロピテクス類で見られるように、顎骨や臼歯形態などの咀嚼器官が頑丈化する。しかし、アフリカでホモ属が出現し、200万年前前後にユーラシア大陸に拡散して以降、退縮傾向が表れ始める。今回の上顎大臼歯の解析で得られたヒトに特有の形状変異パターンは、この時期に新たに獲得した形質と関わっていると考えられる。 そこで、この中期更新世以降のユーラシア大陸におけるホモ属の大臼歯形態の変化の様相とそれを促した進化的要因を明らかにするため、継続的に発掘調査を行ってきたトルコにおいて、複数の更新世化石サイトを踏査し、あらたな発掘調査地を選定する調査を夏季に実施する計画を立てていた。しかしコロナ禍における渡航制限により調査することはできなかった。我々日本側の研究者が渡航できなかったことは残念だったが、トルコの共同研究者らは調査自体は実施しており、得られた結果についてオンライン会議などを通じて情報共有できたことは今後につながる成果と言える。 また、化石大臼歯の解析についても進展があった。ケニアの中新世の化石サイトであるナカリにて出土した類人猿の上顎第3大臼歯の系統関係推定のため、これまでにケニア国立博物館においてCT撮影した化石資料を比較対象として、定量的な形態解析を行った。その結果、現生種に見られるような派生的な特徴を持つわけではなく、他の中新世類人猿と同様、ある程度祖先的な特徴を保持していることが示唆されたが、さらなる検討が必要である。
|
Research Products
(4 results)