2017 Fiscal Year Research-status Report
「幹細胞人類学」の確立を目指した機能ゲノム進化解析
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17K15204
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
津山 淳 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (20760101)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 機能ゲノム進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生11、14、18日目それぞれの胎仔脳からfluorescence activated cell sorting (FACS) を用いて神経幹/前駆細胞を精製し、Assay for Transposase Accessible Chromatin with high-throughput sequencing (ATAC-seq)による神経幹/前駆細胞オープンクロマチン解析をこれまでに行っている。本年度はこれらのシグナルから機能的かつヒトで保存されていない領域の同定を試みた。転写開始点近傍2.5kbを除くピーク領域の配列種間比較から配列的にヒトで保存されていないエンハンサー候補領域を同定した。次に同定したマウス神経幹/前駆細胞のATAC-seqから得られたピークをラット、マーモセット、アカゲザル、チンパンジーのゲノムにそれぞれマッピングし、保存されていた領域を絞り込んだ。これらの配列をヒトのゲノムにマッピングし、ヒトで保存されていなかった配列のみを抽出した。また取得したヒト神経幹/前駆細胞とマウス神経幹/前駆細胞の発現プロファイリングを比較し、ヒトにおいて発現が低下していた遺伝子の近傍に位置する領域に位置するATAC-signalに絞り込むことで16領域の候補を抽出できた。これらの16領域中10領域が発生期の神経幹/前駆細胞において重要な役割を担う遺伝子の近傍に位置していた。それぞれ2kbp-30kbpの大きさに及ぶヒト特異的欠損ATAC-signal配列をできる限り全長を挟み込むようにsgRNAを設計したものをCas9タンパクを同時に発現することができるpx330にクローニングし、子宮内電気穿孔法によって発生期のマウス神経幹/前駆細胞に導入し、マウスの大脳皮質発生における神経産生数を増強していると思われる領域を破壊したところ幹細胞の増殖を亢進する領域が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピゲノムデータからヒトの大脳皮質進化に貢献した可能性のある領域を同定することができた。スループット性を向上させるために子宮内電気穿孔法でスクリーニングを行ったため、マウスの作製やエンハンサーの標的遺伝子の同定を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
エンハンサーが制御する遺伝子群および制御している上流因子の同定を目指す。近年、エンハンサーやプロモーターはこれまで考えられていた以上に複合的に集合し互いに影響し合っていることが分かってきた。また、スーパーエンハンサーのように巨大なシスエレメントは多くの領域を巻き込み、細胞の転写状態を調節する。そこで標的遺伝子同定に向け、エンハンサーとプロモーターの相互作用を少数細胞かつ高解像度にゲノムワイドに可視化するための実験系を立ち上げる。
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Causes of Carryover |
マウスを作製する予定であったが、子宮内電気穿孔法に切り替えたためマウス作製用の試薬の購入を見送った。次年度は作製する必要が生じたため、予定通り試薬を購入する。
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