2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15215
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 崇生 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60752219)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物形態学 / 植物生理学 / 作物学 / イネ / 籾 / 高温障害 / 走査型電子顕微鏡 / 毛状突起 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ登熟期における籾への急激な転流増加に対応する「脱水機構」の謎について、新規に発見された「籾の外表面における小毛からの排水現象」に着目し、その解明を目指す。小毛上に排出される微小な液滴を電子顕微鏡によって観察・測定し、出穂から登熟完了までの生育段階や昼夜間における変化などを調査することにより、小毛による排水現象の生理生態を明らかにする。本研究が達成されることで、イネ科植物種に広く存在するものの普遍的機能が不明である小毛の存在理由の解明という生物学的意義に加え、高温(登熟)障害耐性に繋がる形質の提示という農学的意義がもたらされると期待される。 本研究では、籾の脱水機構の解明に向けて、籾の生育段階、日変化、イネの品種間差異に着目し、頴殻外表皮の小毛からの排水、籾からの蒸散、糖(デンプン)の籾内蓄積を主な調査項目として解析する。 1年目の本年度は、標準品種として日本晴を供試し、籾表面からの水分排出の観察と定量法の確立に注力した。まず、濡れた試料も観察可能な低真空モードでの走査型電子顕微鏡観察によって、イネ籾表面の小毛の先端に水滴が観察されることを確認した。この手法によって、籾表面上の水滴は開花後4日目から見られ始め、開花後7日目にかけて増加することが明らかとなった。なお、この期間は、籾内部において水分を多く含んだ胚乳が増加する時期と一致することが籾内部の割断観察から確認された。この期間において小毛からの水分排出は継続的に行われていると予想されたが、デジタル顕微鏡を用いた経時観察からは水滴の液量の増減は見出されなかった。今後、観察環境の湿度条件などの制御を厳密に行い、再検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度、小毛からの排水量の定量に併せて籾からの蒸散量の測定も行うことで、籾の登熟過程における小毛の寄与を検証する予定であったが、その測定に用いる予定であった光合成測定器が故障したため、着手できなかった。光合成測定器は高額で、借用も難しい装置であったため、製造元での修理が完了するのを待っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の光合成測定器の修理が完了次第、籾からの蒸散量測定を行い、これに併せて走査型電子顕微鏡での小毛からの排水量観察を行い、両者の相関を評価し、籾登熟の日変化に伴う小毛の働きを検証する。また、観察環境の湿度条件などの制御を厳密に行ってデジタル顕微鏡による経時観察を行い、小毛の排水機能の時間変化を調査する。また、これまでに調査してきた日本晴とは籾表面の毛状突起数が異なる品種を用いて蒸散量および排水量を測定して比較する。
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Causes of Carryover |
光合成測定器の故障のために本年度は行うことができなかった実験分の消耗品等の物品購入および実験補助のための人件費を次年度に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)