2017 Fiscal Year Research-status Report
イネ根の吸水能改善に関する研究:節水栽培における生産安定性の向上を目指して
Project/Area Number |
17K15218
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
亀岡 笑 酪農学園大学, 農食環境学群, 助教 (40781878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イネ / 節水栽培 / 間断灌水 / 根系発育の可塑性 / 土壌水ポテンシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
地下水位の低下や農業用水の汚染による水資源不足は年々深刻化している。「間断灌水法」は、農業用水の消費量が特に多い水稲栽培において有効な節水栽培技術であるが、再灌水の遅れに伴う土壌の乾燥発生がしばしば収量減少の原因となっている。本研究では、軽度の乾燥条件下での発揮が報告される「根系発育の可塑性」に着目し、「間断灌水」の再灌水時の土壌の乾燥程度を複数設定し、根系発育の可塑性発揮が最大になる再灌水時の土壌の乾燥程度を明らかにすることを目指した。 対照区(常時湛水)および「間断灌水」の灌水時期が異なる3 処理区(灌水直前の土壌: 1.ほぼ湿潤 2.軽度の乾燥 3.重度の乾燥)を設定し、幼穂形成期までの間、ポット栽培にて処理を続けた。日本晴は「-40 kPa」再灌水区で、Swarnaは「-20 kPa」再灌水区で、KDML105は「対照区」において茎葉乾物重が最大となった。対照区との「総根長」の差を「根系発育の可塑性の発揮程度」として評価した結果、根長についても茎葉乾物重と同様に、品種ごとに異なる傾向がみられた。すなわち日本晴は「-40 kPa」 再灌水区で、Swarnaは「-20 kPa」再灌水区で、対照区と比較して「総根長」、「平均節根長」、「側根分枝能力」が大幅に増加した。一方KDML105は、全処理区で対照区に比べて「節根数」の大幅な減少が見られ、その他の根系形質も日本晴、Swarnaのような増加が認められず、総根長も対照区に比べ減少した。 本研究より、間断灌水法において、①茎葉新鮮重を最大化する再灌水時の土壌水ポテンシャルを品種ごとに明確に特定し、②特定した処理区において根系発育の可塑性発揮の程度が最大となることを明らかにし、さらには③根系形質の発育的可塑性に重要な役割を果たす特定の根系形質を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初期待した通り、特定の間断灌水処理区において根系発育の可塑性が顕著に発揮されることが明らかとなった。さらに、間断灌水のような乾湿の繰り返し条件では、継続的な乾燥条件下とは異なる根系形質が根系発育の可塑性発揮に重要であることが示唆され、各栽培環境をターゲットとした根系フェノタイピングが必須であることが改めて示された。 実験環境の設定面では、当初予定していた「土壌水分センサーと自動潅水装置を同期させた自動的な水管理」は2017年度には実施せず、自動化に必要な情報の整理(1日に必要な土壌水ポテンシャルセンサー値の確認回数、等)に努めた。 栽培試験そのものは予定通り進めることができ、期待した結果も得られたことから、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結果について年次間差を検証するため、2017年度試験と同様のポット栽培試験を実施し、茎葉乾物生産と根系発育の可塑性発揮との関係性を異なる水分処理区ごとに評価する。 さらに、根系発育の可塑性がイネの水分吸収や光合成に果たす役割を評価するために、気孔コンダクタンスを含めた生理面の測定評価を実施する予定である。 同時に、間断灌水処理の精度向上を目指し、自動的に水管理する仕組み作りにも取り組む。
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Causes of Carryover |
旅費、人件費・謝金の出費が発生しなかったため、また2017年度に当初検討していた測定機器の購入を次年度に見送ったため次年度使用額が生じた。
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