2017 Fiscal Year Research-status Report
解剖学的手法を用いたダイコンの多様な根形を生み出す遺伝的なメカニズムの解明
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17K15221
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 康子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50582657)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイコン / 解剖学的手法 / 肥大成長 / 根形の多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイコンの多様な根形は、肥大成長の程度と有無、またそれらの場所が異なることによって生み出されていると考えられる。肥大成長には、主に細胞分裂と細胞の大きさ、組織構造の違いが関与していることに着目し、本年度は解剖学的手法を用いて形の異なる品種間の肥大成長の違いに関与する形質と部位の特定を試みた。 根形が異なる3品種群(聖護院、三浦、青首)からそれぞれ1品種を供試し、播種後1週間ごとに1品種あたり3個体を収穫した。全長などの形態的形質を測定後、FAA固定液で保存した。 ダイコンは木部肥大型であることから、解剖学的形質として、木部柔細胞の数と大きさ、形成層の有無を測定した。調査を進めていくと、肥大している部位では二次形成層と考えられるものが多数観察された。先行研究から二次形成層は肥大成長に関わる分裂組織であるということから、二次形成層の数と大きさも測定形質に加えた。またダイコンのどの箇所が品種間の肥大成長の違いに関与しているかを調べるため、首から肥大していない細い根までのダイコン全体を網羅するような11部位を設定した。また肥大成長の指標として、各部位の横断面を測定した。凍結ステージを取り付けたスライディングミクロトームを用いて切片を作成し、10週目の3品種個体について各形質を測定した。 その結果、0.1cm程度の細根では形成層が確認されなかった。また顕著に肥大成長している部位でのみ、二次形成層が観察され、その柔細胞が大きくなっていたことが明らかになった。品種間で比較すると、横断面が同じ太さの細長型の2品種(青首群と三浦群)でも柔細胞の数と大きさは異なることから、肥大成長に関わる柔細胞の大きさや数は品種特異的であることが示された。二次形成層の数と大きさも同様の結果を示したが、二次形成層の活性(数×大きさ)を見ると、もっとも肥大成長をしている聖護院で顕著に大きいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究が進んでいるため
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査により、肥大成長に関連している可能性のある形質を特定することができた。しかし測定した品種数が3と少なく、品種間変異を評価するには十分でないため、今後は形の異なる品種数を増やしていく。また10週間の経時変化も調査する。
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Causes of Carryover |
本研究では、申請者が所属している神戸大学大学院農学研究科の他研究室が所有しているスライディングミクロトームを用いて切片の作成を行っている。切片の作成過程で生じる消耗品はすべてその研究室で購入された物品を使用しているため、当初の予定よりも消耗品の支出額が減少した。また今後はgenotyping by sequence解析などを外注する予定のため、残予算は次世代シーケンサーを用いた解析に使用する。
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