2018 Fiscal Year Research-status Report
解剖学的手法を用いたダイコンの多様な根形を生み出す遺伝的なメカニズムの解明
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17K15221
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 康子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50582657)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイコン / 根形 / 組織学的観察 / 木部柔細胞 / 二次形成層 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイコンの多様な根形は、肥大成長の「程度」と「有無」、またそれらの「場所」が異なることによって生み出されていると考えられる。昨年度の組織学的観察によって、肥大成長の「有無」には形成層が不可欠であること、また肥大程度の大きい箇所には二次形成層が存在することが示された。そこで本年度は肥大成長の「程度」に関連する組織学的形質を明らかにするため、根形の異なる7品種を用いて、木部柔細胞と二次形成層径の肥大成長の程度への関与を調査した。 各品種3個体を供試し、根形を特徴づける4部位(胚軸と根の境界、最大幅、肥大部先端、細根)の横断面を観察した。部位ごとに、約1cm幅の横断面のブロックを切り出し、凍結式スライディングミクロトームで作成した切片を、サフラニン-ファストグリーンで二重染色し、画像を取得した。中心から形成層にかけて1列に並ぶ木部柔細胞の数と大きさ、二次形成層の数と大きさを測定形質とし、部位ごとにImage Jで計測した。 4形質が肥大成長の「程度」に関連するか調べるため、肥大成長の指標である横断面の直径を目的変数として単回帰分析を行ったところ、全形質で有意な正の効果が認められた。二次形成層の数と大きさ(R2=0.03、0.15)に比べて、木部柔細胞の数と大きさ(R2=0.81、0.74)が横断面の直径に強い影響を与えていることが示された。また同様の傾向は、品種ごとに単回帰を行った場合にも確認された。そこで木部柔細胞の数と大きさが横断面の直径に与える影響を調べるため、半径1cmあたりの柔細胞の数を算出したところ、品種間で有意差が認められた(p<0.01)。以上の結果から、ダイコンの肥大成長の「程度」には木部柔細胞の数と大きさが強く影響していること、品種によって柔細胞の数が増える品種と大きくなる品種があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、当初の予定であった、品種間の肥大成長および根形の差異に関連する部位とその生育時期を明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
肥大成長の程度が同じダイコンでも、柔細胞が増える品種と大きくなる品種があることから、肥大成長の仕方が異なる2つの品種を用いてRNA-seqを行い、発現解析を行う。そのRNAのサンプリングは、肥大成長が起こる前と後の2回行い、肥大成長にどの遺伝子が強く発現したかも明らかにする。 またこれまでに供試した10品種を含む、様々な根形をもつ品種を用いてRAD-seq解析を行い、各品種の遺伝子型データを取得し、組織学的形質だけでなく、形に関わる形態形質を用いてアソシエーション解析を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究では、申請者が所属している神戸大学大学院農学研究科の他研究室が所有しているスライディングミクロトームを用いて切片の作成を行っている。切片の作成過程で生じる消耗品はすべてその研究室で購入された物品を使用しているため、当初の予定よりも消耗品の支出額が減少している。次年度に、RNA-seqとRAD-seqをsequence解析などを外注する予定のため、残予算は次世代シーケンサーを用いた解析に使用する。
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