2019 Fiscal Year Research-status Report
トウガラシ属の種間雑種植物に認められる受精後交雑障壁の解明
Project/Area Number |
17K15224
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
手塚 孝弘 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (20508808)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トウガラシ / 種間交雑 / 生殖隔離 / 雑種弱勢 / 系統解析 / ITS配列 / SSRマーカー / 植物遺伝育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではトウガラシの交雑による育種的改良を妨げている生殖隔離を理解し、メカニズムを解明することを目指している。生殖隔離の解明のために、表現型等の特性の解析、遺伝学的解析を進めている。また、トウガラシ系統の類縁関係と生殖隔離との関連性についても調査している。2019年度は以下のような実験を行った。 1)生殖隔離の一種である雑種弱勢を示す個体では、正常個体に比べて、葉数および草丈が減少し、主茎の上位節間長が短くなっていることを明らかにしている。また、側枝を展開しない代わりに異常な葉が腋芽から出現していた。組織学的観察により、弱勢個体の茎頂は扁平な形であり、細胞の並びに異常が観察されることを明らかにした。発芽後40日目では、正常個体の茎頂部は花芽へと分化しているにも関わらず、弱勢個体は花芽分化していなかった。 2)25℃以下では雑種弱勢が認められたが、30℃以上では雑種弱勢が抑制された。したがって、雑種弱勢は温度感受性であることを明らかにした。次年度は、高温条件から低温条件に移した個体を用いて、遺伝子発現の解析を行うことを予定している。この他に代謝物の測定も行っている。 3)雑種弱勢のメカニズムを探る目的で、弱勢個体にジベレリン酸を処理した。しかし、ジベレリン酸には雑種弱勢を抑制するような効果は認められなかった。 4)生殖隔離の遺伝解析の結果、両親のそれぞれがもつ単一の遺伝子が原因であることを明らかにしている。原因遺伝子の単離・同定に向けて、F2分離集団を作成した。次年度は、これらを用いた解析を行う予定である。 5)SSRマーカーおよびITS配列を用いて、トウガラシ系統の系統解析を行い、系統樹を作成した。また、これらのトウガラシ系統を用いて交配を行い、いくつかの系統について生殖隔離遺伝子の有無を明らかにした。次年度も交配を進め、系統の類縁関係と生殖隔離の関連を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の台風による温室・実験圃場の被害が甚大であり、一部植物の損失が発生した。また、2019年度においても温室の修復ができておらず、植物栽培場所が限られた中での研究実施を余儀なくされた。このような事態に伴って実験に遅れが生じた。また、2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も発生し、研究活動が停滞している。これらの事態から、遺伝子発現解析等の実施を2020年度に持ち越すことになった。しかし、このような状況下においても、出来得る限りの研究活動を続け、成果も着実に出てきていることから、本研究課題はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作成した分離集団を用い、生殖隔離原因遺伝子の同定を目指す。また、生殖隔離に関連する遺伝子の網羅的な解析を実施し、生理学的な解析もさらに進展させる。トウガラシの系統解析および生殖隔離遺伝子の分布状況についても調査する系統数を増やし、トウガラシの育種に活用できるような情報を整備する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度の台風による温室・実験圃場の被害が甚大であり、一部植物の損失が発生した。2019年度においても温室の修復ができておらず、植物栽培場所が限られた中での研究実施を余儀なくされた。また、2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し、研究活動が停滞している。このような事態に伴って実験の遅れが生じ、遺伝子発現解析等の実施を次年度に持ち越すことになった。次年度は、遺伝子発現解析等に予算を使用することを計画している。
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Research Products
(10 results)