2017 Fiscal Year Research-status Report
The function of chloroplasts as a platform activating signaling for hypersensitive response
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17K15230
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
関根 健太郎 琉球大学, 農学部, 准教授 (30574058)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 葉緑体 / 基礎的防御 / シグナル伝達系 / ウイルス抵抗性 / 脂肪酸代謝 / キュウリモザイクウイルス / 抵抗性遺伝子 / 誘導抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物のウイルスに対する抵抗性シグナル伝達系における葉緑体の役割を明らかにするために、まずは葉緑体の脂肪酸代謝シグナル伝達系変異体ssi2の基礎的防御機構を活性化する表現型を抑制する復帰変異体であるrdc2変異体の特徴付け、および、原因遺伝子の探索を行った。rdc2変異体はPseudomonas syringae pv. tomato DC3000 AvrRpt2に対する抵抗性が弱まっており、バクテリアの増殖量が優位に高くなっていた。非親和性細菌接種に対して活性酸素種の蓄積が減少していた。さらにrdc2変異体はパラコートに対して耐性を持つことから、活性酸素種の生成に関与する変異を有することが予想された。マップベースクローニングによって原因遺伝子を探索したところ、葉緑体に局在するクロロフィルA/B結合タンパク質の1アミノ酸置換を伴う塩基置換を見出した。ネイティブな遺伝子を形質転換したところ退緑の表現型が失われる個体が得られ、本遺伝子が原因遺伝子あると確認した。本変異体のウイルスに対する応答を調べたところ、親和性のウイルスに対する罹病性に大きく影響しないものと考えられた。非親和性のウイルスの応答を調べるために、交配によりキュウリモザイクウイルス抵抗性遺伝子RCY1とrdc2変異遺伝子を共にホモに持つ植物の作出を行っている。 また、本研究を進めるにあたり、新たな実験材料として、新たにキュウリモザイクウイルス沖縄バナナ系統バナナ分離株(CMV-OBb)を単離し、全長のゲノム配列を決定した。CMV-OBbは、RCY1抵抗性タンパク質に認識されず、抵抗性遺伝子RCY1を持つシロイヌナズナにおいても全身感染することを明らかにした。加えて、薬剤処理により親和性のCMVの感染を抑制できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子生物学実験環境の整備に時間がかかり、当初予定のタンパク質実験が思うように進んでおらず、葉緑体のプロテオーム解析などには着手できなかった。またウイルスベクターを用いたジーンサイレンシング実験についても、遺伝子組換植物実験環境の整備に時間がかかり、本年度は着手できなかった。しかし、その一方で、葉緑体の機能欠損変異体については原因遺伝子が同定できたため、今後の新たな葉緑体の病害抵抗性シグナル伝達系における機能解析の研究材料として期待される。加えて、独自に新規ウイルス系統を単離したところ、病害抵抗性研究に有用な実験材料を得ることができた。さらにシロイヌナズナの形質転換体の作出や、交配による目的遺伝子を持つ植物の作出など時間のかかる部分を含め、研究材料の準備が一年目で十分進められてきたため、2年目に材料作りに時間を割く必要がなく研究を進められる。また、ウイルスのゲノム解析においてはバイオインフォマティクス技術を習得できたため、次年度以降の解析技術としてオミックスの活用を計画する。以上に加えて、本年度途中で採択された独立形成支援によって遺伝子組換え実験のための機器類を揃えられたこと、研究補佐員を雇用できたため、大いに研究の進捗が図られた。新規ウイルスゲノムの全長決定などを通して、分子生物学実験を研究室所属学生に浸透することができたため、次年度以降は実験指導に割くエフォートを軽減できるものと期待される。以上のことから判断して、研究全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は植物のウイルス抵抗性発現時における葉緑体の役割について、葉緑体タンパク質のノックダウンによる葉緑体欠損植物や葉緑体タンパク質変異体rdc2のウイルス感染応答を詳細に解析する。特に葉緑体を持たない細胞におけるウイルス抵抗性応答を評価する実験系の構築が本課題の中心的な課題である。ウイルスの増殖量への影響や、細胞内応答、特にトランスクリプトーム解析、葉緑体のプロテオーム解析を重点的に行う予定である。rdc2変異体に関しては、ウイルス病害抵抗性応答に変化があるかについて明らかにしたところで、原因遺伝子の同定を中心とした論文を年内にまとめる予定である。また、シロイヌナズナのCMV抵抗性タンパク質と相互作用するタンパク質候補がプルダウンアッセイとプロテオーム解析によって得られているため、当該タンパク質の機能解析をアグロバクテリウムやウイルスベクターを用いた一過的発現系を構築し、その機能に迫る。 さらに、葉緑体の大きな役割として、光合成や光呼吸が第一に考えられるため、この原因となる光の病害抵抗性シグナル伝達系への関与についても、明らかにしていきたい。先行研究で青色光受容体タンパク質がウイルス抵抗性に関わるということが報告されているため、まずは当研究室の研究材料(シロイヌナズナーCMV)においても同様であるかを併せて検証する。 最終年度であるにもかかわらず、上記のように検証すべき課題が多く残されている。指導する学生だけでなく、研究補佐員を継続的に雇用して効率的な研究の推進を図る。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究補佐員の人件費が契約期間が短縮され少額となったため。
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Research Products
(2 results)