2017 Fiscal Year Research-status Report
水田雑草タイヌビエにおける多剤抵抗性成立要因の解明
Project/Area Number |
17K15234
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩上 哲史 京都大学, 農学研究科, 助教 (00761107)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 除草剤抵抗性 / 雑草 / 解毒代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
多剤抵抗性タイヌビエが抵抗性を示す3種のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)阻害型除草剤について、これらの除草剤のタイヌビエでの挙動をLC-MS/MSを用いて解析した。その結果、いずれの除草剤も抵抗性系統で速やかに不活化されることが明らかになり、これまで想定してきた解毒代謝型の抵抗性機構を支持する結果が得られた。これまでの研究により、これらの除草剤を代謝すると考えられるタイヌビエの遺伝子が複数同定されていたため、これらの遺伝子の抵抗性への関与を検証した。タイヌビエの抵抗性系統および感受性系統の交雑後代について、これらの遺伝子の転写量と、抵抗性形質の関連を評価すると、完全な連鎖関係が認められた。これらの遺伝子を形質転換したイネは、これらの除草剤に顕著な抵抗性を示した。さらにこれらの遺伝子を酵母で発現させ、in vivoでの除草剤代謝機能を評価したところ、OH体と考えられる代謝物が検出された。以上の結果から、これらの遺伝子が3種のACCase阻害剤抵抗性に関与すると考えられた。 一方、これらの遺伝子では説明できないもう一つのACCase阻害剤に対する抵抗性に関与する遺伝子を探るため、RNA-seq解析から候補となった遺伝子について、交雑後代における転写量と抵抗性との連鎖関係を評価すると、約10種の遺伝子の高発現が抵抗性と連鎖することが明らかになった。そこでこれらの遺伝子の全長を単離し、イネカルスに形質転換した。しかし形質転換体の除草剤感受性はいずれも野生型カルスと同程度だった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)タイヌビエの交雑後代を用いた除草剤抵抗性と候補遺伝子の転写量の解析については、当初の計画通り進めることができ、除草剤抵抗性と関連する遺伝子を複数同定することができた。 2)候補遺伝子を形質転換したイネの除草剤感受性試験についても、カルスでの試験と同様に3種のACCase阻害剤については抵抗性を示す結果が得られており、計画通り進んでいる。一方でフェノキサプロップ抵抗性の候補遺伝子については、イネ形質転換体を作出し、そのフェノキサプロップ感受性を評価したものの、抵抗性を付与する遺伝子は見つからなかった。そこでRNA-seqデータを再解析し、新たな候補遺伝子を見出した。これらについては今後速やかに機能解析を行う必要がある。当初の計画よりはやや遅れているが、新たな候補遺伝子についても全長は単離できており、次年度速やかに解析できる予定である。 3)除草剤代謝遺伝子の微生物での発現については、宿主の検討、コドンの最適化などを検討し、in vivoでの解析に十分な発現量は達成され、順調に進んでいる。in vitroでの解析を行うには十分ではなく、引き続き検討を進める必要がある。 以上1から3の計画事項に加え、当初計画になかったタイヌビエにおける除草剤の挙動を評価することができた。これにより抵抗性のメカニズムが解毒代謝によることを強く裏付ける結果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
3種のACCase阻害剤を代謝する遺伝子について、微生物での発現量を向上させるために、N末配列の検討などを試みる必要がある。またフェノキサプロップ抵抗性に関わる遺伝子は未だ不明であり、RNA-seq解析で候補となった遺伝子についてその機能解析を進める。これらについても除草剤代謝機能が認められない場合は、想定していた除草剤代謝酵素以外の関与についても検討する必要がある。
|