2017 Fiscal Year Research-status Report
放射性同位体/電気生理/オミクス解析を組合せた根表層でのミネラル獲得機序の解明
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17K15236
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 奈通子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60708345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物 / 根 / イオン吸収 / マグネシウム / ナトリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ(日本晴、コシヒカリ)とシロイヌナズナ(Col-0)の根による複数のイオン吸収特性について、放射性同位元素と微小電極を用いた解析を進めた。放射性同位元素を用いた解析では、根全体でのイオン吸収量が正確に算出できる一方で、吸収部位の特定に関しては数mm単位が限界である。この点について、微小電極を用いた高解像度でのイオン動態解析によって補完することで、根におけるイオン吸収の全容を明らかにしようとしている。【イオン吸収速度の算定】2週齢のイネのナトリウムの吸収速度は、1日間の50mMのNaCl処理によって半分程度に低下することがNa-22を使ったトレーサー実験によって示された。マグネシウムの吸収速度をMg-28を使って測定したところ、2週齢のイネでは3日間の、1週齢のシロイヌナズナでは1日間のマグネシウム欠乏処理によって1.5~2.0倍に上昇することが分かった。特に、シロイヌナズナにおいては根端から3~6 mmに位置する組織での吸収活性が4~5倍に高まっていることが示唆されたため、この組織でのマグネシウムフラックスを詳細に検討することにした。【イオンフラックス測定】年度後半にタスマニア大学に滞在し、微小電極法(MIFE)によるフラックス計測法を修得した。さらに、シロイヌナズナの根において、細胞レベルでのイオンフラックス(流入および流出)の計測を試みた。カルシウムとナトリウムのフラックスは計測可能な状況になったが、マグネシウムのフラックス測定については、電極に用いるイオノフォアのイオン選択性が不十分であったため、イオノフォアの変更を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射性同位元素を用いたイオン吸収速度の計測は、イネ、シロイヌナズナともに実験系を確立し、安定的にデータを得られている。微小電極を用いたフラックス計測については、マグネシウムの計測手法に改良が必要な状況であるが、いくつかの解決法を考案しているので、研究全体としては、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
MIFEに関しては、マグネシウムイオノフォアの変更を試みる。放射性同位元素を用いた実験では、イオン吸収活性が最も高い部位をイオンごとに特定する。その上で、当該部位におけるトランスクリプトーム解析を実施する。
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Causes of Carryover |
大学院生がタスマニア大学に滞在するために必要な費用について、農学生命科学研究科が主催する大学院生の留学を支援するプログラムから援助が得られたため。次年度に繰り越した予算については、次年度に予定しているタスマニア大学での再実験で使用する。
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Research Products
(4 results)