2017 Fiscal Year Research-status Report
GS2がアンモニア毒性を引き起こすメカニズムの解明
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17K15237
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
蜂谷 卓士 名古屋大学, 高等研究院(農), 特任助教 (80709311)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸ストレス / アンモニア同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンモニアのみを窒素源に含む培地で栽培した野生株とgs2欠損変異株のシュートを用いて、トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、gs2変異株では酸ストレス誘導遺伝群の発現が低下することを見出した。定量PCR解析の結果、代表的な酸ストレス誘導遺伝子の発現レベルが、硝酸栽培植物と比べ、アンモニア栽培植物で一様に高かった。アンモニア栽培の野生株とgs2変異株のシュートおよび葉肉プロトプラストからのプロトンの正味の排出量を比較したところ、gs2変異株で有意に低かった。一方、硝酸栽培のシュートおよびプロトプラストからはプロトンの排出は検出されなかった。アンモニア栽培植物の窒素化合物を定量したところ、野生株と比べてgs2変異株ではアンモニアが蓄積し、グルタミンレベルが低下した。酸ストレス感受性を示すstop1変異株、または、細胞外へのプロトンの排出が恒常的に活性化したost2-2変異株のシュートを野生株の根に接いだところ、いずれもアンモニア感受性が亢進した。以上から、GS2のアンモニア同化から放出された過剰なプロトンによる酸ストレスが、アンモニア毒性の原因の一つであることが示唆された。一方、葉緑体の構造や光化学系活性には両株でほとんど差がなく、葉緑体がGS2依存的なアンモニア毒性のターゲットである仮説は支持されなかった。日本土壌肥料学会年会および第3回植物の栄養研究会において、研究成果を口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想に反して、葉緑体がGS2の関与するアンモニア毒性ターゲットである可能性は支持されなかった。一方、野生株とost2-2株の接ぎ木実験の結果から、細胞外の酸性化が毒性の原因であることが示唆された。このように当初の仮説とは異なる結論を得たものの、論理的に整合性のある結果が得られている。学会等でも多くの研究者に好意的なレスポンスをいただいた。現在、平成30年度内の出版を目指して原著論文を執筆している。本研究は順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の仮説が正しければ、GS2だけでなく、GS1の活性をシュート特異的に低下させることでアンモニア耐性を付与できる可能性がある。このため次年度はGS1の多重変異株を用いた解析も実施する。現在のところ、アンモニア依存的な酸ストレスのターゲットおよびメカニズムが明らかでない。この解明に向けて、細胞外pHの分子プローブを用いた精査、および、関連変異株による検証を併せて実施する。
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Causes of Carryover |
本年度後期からの研究室の引越の都合により、人工気象器を設置するスペースが確保なくなったため、本年度の購入を見送った。設置場所が確保され次第、スペースに見合った機種を再選定し、購入する予定である。同じく研究室の引越しのため、およそ3ヶ月間実験が滞るとともに、消耗品の保管スペースも確保できず、消耗品費の使用が減った。また、国内外の他のプロジェクトの都合によって、本年度の植物生理学会への参加を見送ったため、旅費が余った。来年度、より多くの場で成果を公表する予定である。
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Research Products
(4 results)