2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15239
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
横正 健剛 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (50790622)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸性土壌耐性 / マンガン / ソバ / Nramp / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の耕地面積の約3-4割は酸性土壌である。酸性土壌ではアルミニウム(Al)やマンガン(Mn)などの金属毒性により作物の生産性が著しく低下している。ソバは酸性土壌に強いだけでなく地上部にアルミニウムやマンガンを集積する特徴がある。このようなソバのアルミニウムやマンガンの吸収、集積の分子機構を明らかにするため、本研究ではソバのNrampファミリーに着目し研究を進めた。 Nrampファミリーは生物界に広く存在し、金属イオン(Al, Fe, Mn, Cdなど)を輸送することが報告されている。ソバのRNA-SeqデータをもとにNrampファミリーを検索したところ、ソバには7つのNramp遺伝子が根または葉で発現していた。それぞれの遺伝子について絶対定量による発現量の比較を行ったところFeNramp4, 5, 6は主に根で発現しておりFeNramp1, 2, 3, 7は根と葉の両方で発現していた。根における金属欠乏による発現応答について調べたところFeNramp1の発現量は鉄欠乏に応答し、FeNramp5の発現量はMn欠乏時に増加していた。さらにレーザーマイクロダイセクションを用いた根の組織特異的な発現解析からFeNramp1, 2, 5は根の全体で発現することが明らかとなった。ソバのNrampタンパク質の輸送基質を特定するために酵母にそれぞれの遺伝子を発現させ輸送活性測定を行った。その結果、ソバのNrampファミリーにはアルミニウムの輸送活性を示すものはなかったが、FeNramp5を発現させた酵母にはマンガンとカドミウム輸送活性があり、FeNramp1には鉄の輸送活性があることを明らかにした。さらに、シロイヌナズナのマンガン吸収変異体atnramp1 にFeNramp5を発現させるとその表現型を相補する。これらの結果からソバのマンガン吸収はFeNramp5が担うことを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸性土壌の主な生育阻害因子にアルミニウム毒性やマンガン毒性がある。ソバは酸性土壌に強いだけでなく地上部にアルミニウムやマンガンを集積する。本研究ではこのようなソバのアルミニウムやマンガンの吸収、集積の分子機構を明らかにすることを目的とし、当初の計画通りソバのNrampファミリーに着目し研究を進めた。それぞれの遺伝子について発現解析と酵母を用いた輸送活性を行なった結果、Nramp5がマンガン輸送体であることを明らかにすることができた。さらに、当初は次年度で解析予定であった植物での機能解析についても、シロイヌナズナのマンガン吸収変異体atnramp1 にFeNramp5を発現させる相補試験を行い、ソバのマンガン吸収はFeNramp5が担うことを突き止めている。これらの結果は日本土壌肥料学会と国際植物栄養学会議で発表した。一方でソバのNrampファミリーの中にはアルミニウムを輸送する遺伝子は無かった。また最近のシロイヌナズナのAtNIP1.2がアルミニウムリンゴ酸錯体を輸送するとの報告から、ソバで相同性の高いものを検索し解析を行ったが、アルミニウムイオン、アルミニウム有機酸錯体(クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸)ともに輸送活性があるものは無かった。現在のところソバのアルミニウム輸送体は候補遺伝子の特定に至っていない。今後はソバのアルミニウム耐性に特に着目し主要な輸送体の単離を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにソバのマンガン吸収に関わる遺伝子の単離同定に成功した。今後はソバのアルミニウム耐性に着目し主要な輸送体の単離を目指したい。しかし、これまでの研究からソバのアルミニウム吸収やシュウ酸分泌に関わる遺伝子は他の植物とは異なりの全く未知の遺伝子であることが予想される。これまでのソバのRNA-Seq、プロテオミクスのデータに加えて、ソバと類似したシュウ酸分泌やアルミニウム集積の特徴を持つ植物(ヤマゴボウ)のRNA-Seqの結果を比較し、遺伝子配列の共通性や発現パターンから候補となる遺伝子の絞込みを行う。現在のところ、機能未知のMFSファミリーなどが候補遺伝子としてあり、これらの遺伝子を中心にアフリカツメガエル卵母細胞を用いた輸送活性解析を進める候補となる遺伝子が絞り込めた場合には異種発現系を用いた輸送活性を行う。シュウ酸の輸送活性測定にはアフリカツメガエル卵母細胞にタンパク質を発現させ14Cでラベルしたシュウ酸を用いて輸送活性を行う。一方、アルミニウム輸送体は酵母に発現させアルミニウムに対する耐性や吸収量を比較する。
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