2018 Fiscal Year Annual Research Report
c-di-GMP signaling network underpinning lifestyle transitions in response to incident light color
Project/Area Number |
17K15244
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 元 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (20780670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境応答 / シグナル伝達 / シアノバクテリア / c-di-GMP / バイオフィルム / シアノバクテリオクロム / 光受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイクリックジグアニル酸 (c-di-GMP) はバクテリアに広く存在する二次メッセンジャーで、様々な機能を調節することで生育様式の転換を司る。好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanusが示す細胞凝集は、三つのシアノバクテリオクロム型光受容体SesA/B/Cが協調して制御するc-di-GMPシグナル伝達により制御される。450 nm の波長をもつ青色光では細胞凝集が顕著に誘導され、500 nmの青緑色光では細胞凝集は全く誘導されない。自然光はあらゆる波長の光を含んでいるため、この光波長に厳密な環境応答が自然界のどこで引き起こされるのかは不明であった。 青色光と緑色光が混ざった条件では、細胞密度が高いほど細胞凝集が抑制されることを発見した。細胞の吸収特性から、シアノバクテリアの群集体内部は緑色光が優先する環境になる。SesA/B/Cは自然光のもとでは、他のシアノバクテリア細胞の陰になっているのか、ひいては凝集体における自らの位置・深さを感知して、細胞内c-di-GMPレベルに変換しているのかもしれない。 T. vulは温泉の微生物マットで緑色の最表層を占めていることから、細胞凝集は生態学的に重要な応答であると期待できる。当初の研究実施計画ではc-di-GMPシグナル伝達タンパク質の空間的ダイナミクスを、主にタンパク質の相互作用と局在に着目して解析する予定であったが、この成果により、群集体における細胞の空間的ダイナミクスの重要性を示唆することができた。研究期間全体を通し、本研究でc-di-GMPシグナル伝達ネットワークにおける分子基盤、およびその生理学的、生態学的意義の理解を深めることができた。環境応答における分子のダイナミクスがどのように細胞のダイナミクスを支え、それが生態環境でどのような意味をもつのか解明するにあたって重要な一歩となった。
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