2017 Fiscal Year Research-status Report
バイオテクノロジーを利用した耐熱化シリカ重合・分解酵素の創製
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17K15246
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤野 泰寛 九州大学, 農学研究院, 助教 (70582659)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | silica / thermostable |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では海綿由来のシリカ重合酵素および分解酵素を進化工学的手法を用いて耐熱化し、ケイ素工業への応用を志向した産業用酵素を創製することを目的としている。初年次はシリカ重合酵素であるsilicateinの耐熱化ならびに好熱菌からのシリカ重合酵素のスクリーニングを行った。 【silicateinの耐熱化】 大腸菌を宿主とするsilicatein発現系を構築し、error-prone PCRによる変異ライブラリを作製した。1次スクリーニングとして、発現後の大腸菌を70℃、30分間処理し、残存活性をモリブデンブルー法により評価した。これまでに約3000クローンのアッセイを行ったが、得られた陽性クローンは1つのみである。また、後述の通り、殆どのsilicateinは不溶性画分に発現しており、これがアッセイを困難にしていることが示唆されたため、分泌発現系であるBrevibacillusを用いた発現系ならびに変異ライブラリを作製した。Brevibacillusの系については活性評価までは至っていない。得られた陽性クローンは発現系を構築し、酵素の精製を行っている。 【好熱菌からのスクリーニング】 Thermus thermophilus HB8をシリカ含有培地で培養し、生じたシリカ沈殿物からのタンパク質抽出およびアミノ酸配列解析を試みた。シリカ沈殿からフッ化水素処理によって抽出された3種のタンパク質はそれぞれTTHA1336、TTHA1634、TTHA1949であると同定された。これらのシリカ重合活性の有無については、当該タンパク質が大腸菌において不溶性に発現したため評価するに至っていない。また、これらのタンパク質は既存のシリカ重合酵素と有意な相同性を示しておらず、物理化学的にシリカ表面に吸着している可能性もあるため、まず活性評価を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概ね予定通りの実験を遂行できているが、期待していた通りの酵素活性を保持した変異株の取得ができていない。このことはsilicateinが大腸菌において封入体を形成することに由来するものと考えられる。文献ではpCold vectorを用いたシャペロン融合発現かつ低温誘導によるsilicateinの可溶化が報告されているが、耐熱化を志向する本研究においては採用しがたい。そこで、培地画分に分泌発現するBrevibacillus発現系を採用することとした。既存法と並行しつつ、この系の構築および発現条件の最適化を行ったため、やや全体の進行は遅れている。Brevibacillus発現系で可溶性タンパク質の発現が認められたため、今後はこの系でも活性評価を行っていくことで効率を上げることが可能であると考えている。また、好熱菌からのスクリーニングにおいても封入体の形成が問題となったため、Brevibacillus発現系の採用を検討する。また、申請者が研究中であるThermus thermophilusを宿主とするシリカ誘導性の異種タンパク質発現システムに応用の目途が立ったため、これらを利用しつつ効率的に研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
silicateinの耐熱化に関しては、封入体の形成を回避するため、Brevibacillus発現系を用いて継続的に耐熱酵素のスクリーニングを行っていく。また、好熱菌からのスクリーニングは対象とする好熱菌の種類を増やして、幅広く行っていく予定である。 また、当初から2年次に予定していたシリカ分解酵素の耐熱化の実験系についても立ち上げを開始する。silicateinの状況を踏まえ、大腸菌発現系の優先度を下げ、まずはBrevibacillus発現系を構築し、アッセイ系を確立する。
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