2017 Fiscal Year Research-status Report
リポテイコ酸の構造多様性と乳酸菌の特異的LTAの免疫誘導能の解明
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17K15247
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
白石 宗 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70725168)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グラム陽性細菌 / 乳酸菌 / Lactobacillus gasseri / リポテイコ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト腸内乳酸菌の Lactobacillus gasseri をモデルとして、種および株レベルでの細胞表層多糖の一つであるリポテイコ酸(LTA)の構造多様性を調べるとともに、これらの特異的な構造と免疫誘導能の関わりを明らかにすることを目的とした。今年度は以下の成果が得られた。 L. gasseri 種のJCM 1131T、JCM 1130、JCM 5814、VLG1、VLG2、VLG3、VLG4の計7菌株を使用した。臨床分離株であるVLG1、2、3、4は、RAPD法によって異なる菌株であることを確認した。全ての株からブタノール抽出法によってLTAを抽出・精製して、NMRおよびMALDI-TOF MS、GC-MSによって構造解析を行った。その結果、L. gasseri JCM 1131T で初めて発見された特異的な四糖構造と三残基のアシル基をもつLTAが全ての菌株で確認された。したがって、L. gasseri 種には共通して特異的なLTAの構造(四糖構造)が存在することが示唆された。 LTAの構造と免疫誘導能を評価するための比較対象として、Lactococcus lactis sp. cremoris(Lactobacillus 属細菌以外の有用細菌)と Staphylococcus aureus(病原性細菌)、Enterococcus faecium(日和見細菌)からLTAを抽出・精製して、前述した方法と同様にLTAの構造解析を行った。その結果、L. lactis では二糖構造と三残基のアシル基をもつLTAが、S. aureus と E. faecium では二糖構造と二残基のアシル基をもつLTAが確認された。 本研究の過程で、種特異的なLTAの構造が存在することが明らかになった。今後はこれらの構造がもつ免疫誘導能を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、L. gasseri 種が共通して特異的なLTAの化学構造をもっているのかを明らかにして、この構造の免疫誘導能に与える影響を観察することが目的である。そのため、本年は7菌株の L. gasseri と比較対象となる 3 菌株(L. lactis、S. aureus、E. faecium)のLTAの構造情報を明らかにすることができた。L. gasseri は、共通して特異的なLTA構造(四糖と三残基のアシル基)を持っており、比較対象となる3菌株は全て異なる化学構造(糖およびアシル基の数が異なる)をもっていた。これらの構造情報は、次年度に実施する予定である免疫誘導能の評価において、構造活性相関を明らかにする重要なデータである。したがって、次年度ではヒト腸管上皮細胞株であるHT-29細胞を使用して、LTAを免疫刺激因子として産生されるサイトカイン(IL-8)量を測定することで免疫誘導能を評価する予定である。以上のことから、おおむね当初の計画通り進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヒト腸管上皮細胞株HT-29細胞と L. gasseri 7菌株、比較対象3菌株(L. lactis、S. aureus、E. faecium)から得られたLTA画分を使用して、LTAが免疫刺激となってHT-29細胞から産生されるIL-8をELISA法によって定量することで免疫誘導能の評価を行う予定である。さらに、実験ではLTAの単独刺激やリポ多糖による免疫刺激後のLTAの影響などを評価する計画である。これらの結果と今年度に得られた構造情報から、LTAの構造活性相関を明らかにする。また、LTAがヒトの免疫細胞と相互作用することを考えると、菌体細胞上でのLTAの局在を理解することも重要であると考えられる。そのため、追加試験として細胞上のLTAの局在評価を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも効率的に菌体が回収できたことで、それに伴う培養関連用品の費用やLTAの抽出・精製にかかわる消耗品の費用が削減できた。また、その他消耗品(シャーレやピペット等のプラスチック製品や培地など)に関しても、節約等により使用額を抑えることができた。次年度は、ヒト腸管上皮細胞の培養関連消耗品やELISAキットが必要であり、これら消耗品の購入や学会等での発表のための旅費として繰り越した金額の使用を計画している。
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Research Products
(2 results)