2017 Fiscal Year Research-status Report
食品成分によるGタンパク質共役受容体を介した抗サルコペニア効果の解明
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17K15267
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近澤 未歩 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80757071)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | GPCR / β2アドレナリン受容体 / 骨格筋 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアは加齢に伴い生じる筋量・筋力低下であり、高齢者の日常生活を妨げることから、高齢化が進む現代において予防策の立案が必要とされている。骨格筋肥大に関与するシグナルを活性化し、骨格筋機能の維持やサルコペニアの予防に貢献する機能性食品の開発は、容易に取り入れ可能な予防策として重要性が高いものである。筋機能向上に寄与する分子の一つにGタンパク質共役受容体(GPCR)が挙げられ、そのアゴニストによる活性化は筋肥大やサルコペニア予防に寄与する。また近年、GPCRの発現レベルを向上させることによっても筋機能改善効果が見込めることも明らかにされつつあり、その応用かも期待される。 本研究では、骨格筋に高発現するGPCRであり、骨格筋肥大効果を有することが知られるβ2アドレナリン受容体(β2AR)に着目し、サルコペニア予防に寄与する機能性食品成分の効果を明らかにすることを目的とする。これまでに行った検討において、(a) β2ARのアゴニストとなる食品成分、(b) β2ARの発現を亢進する食品成分を明らかにするため、ルシフェラーゼアッセイを用いたスクリーニング系を構築した。350種類の食品成分ライブラリよりスクリーニングを行った結果、(a) アゴニストとして4種類、(b) 発現亢進成分として2種類の成分を見出した。今後は、これらの食品成分の作用機構について分子生物学的な観点より明らかにすることで、食品成分による生体調節機構の詳細な機構解明を目指す。最終的には、サルコペニア予防効果を個体レベルで検証することで、機能性食品としての有用性を提唱する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
β2ARを介した食品成分のサルコペニア予防効果について、その作用メカニズムの解析、in vivoにおける筋萎縮抑制効果の検証を行った。 ① β2ARアゴニストとして機能する食品成分のサルコペニア予防効果の解析 これまでの検討により、食品成分のスクリーニングによりβ2ARのアゴニストとして作用する食品成分3種類(Osthole, Gramine, Hordenine)を見出してきた。この食品成分についてさらに検討を進め、3種類の成分がマウス、ヒト両方のβ2ARに対してアゴニストとして機能すること、またこの効果はβ2AR特異的なアンタゴニストであるにICI-118551により完全に抑制されることを明らかにした。さらに、食品成分のマウスへの筋肉投与により、β2AR刺激により活性化するCREB応答遺伝子であるNr4a1, Nr4a3, PGC-1α4の発現が亢進することを確認し、食品成分がin vivoにおいても機能し得ることを明らかにした。この成果は論文として発表した(Chikazawa M. & Sato R. J. Nutr. Sci. Vitaminol., 64, 68-74, 2018)。 ② β2AR発現を亢進する食品成分の発現制御機構解析と個体における活性の検証 スクリーニングにより明らかにした食品成分2種類について、その作用機構を明らかにするべく、β2ARプロモーター活性化機構の詳細な解析を行った。様々な長さのプロモータープラスミドを用いたルシフェラーゼアッセイを行い、食品成分による発現制御に重要な2箇所の領域を明らかにした。また、この領域に結合することが予想される転写因子について、ノックダウン実験、ChIPアッセイ、ABCDアッセイにより明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
① β2ARアゴニストとして機能する食品成分のサルコペニア予防効果の解析 昨年度のうちにこれまでの成果をまとめ、論文発表まで完了したため、今後は継続しない。 ② β2AR発現を亢進する食品成分の発現制御機構解析と個体における活性の検証 マウスへの食品成分含有食の摂食実験を行い、食品成分により骨格筋のβ2AR発現亢進が認められること、クレンブテロール(β2AR合成アゴニスト)投与による筋量増加効果をより向上させることを確認するため、現在検討を進めている。今年度中の論文投稿を目標に必要な追加実験を行う。
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Causes of Carryover |
試薬使用量を減らすために96wellでのスクリーニング方法を確立することができたため、予定よりも使用量は少なくなった。 また、ウェスタンブロッティングでのGPCR下流シグナルの検出については、リアルタイムPCRでの評価がより明確に効果が見られたため、予定していたよりも実験回数が少なく、試薬使用量が少なかった。 翌年度、動物での食品成分の効果について、様々な投与濃度、期間を設定して効果を詳細に検証する予定であり、購入動物数が増える見込みであるため、前年度使用しなかった予算を用いる予定である。
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Research Products
(3 results)