2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the effect of slightly absorbable polyphenol on gut-brain axis modulation from the view point of chrononutrition.
Project/Area Number |
17K15269
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 陽子 神戸大学, 農学研究科, 特命助教 (10543796)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重合体ポリフェノール / GLP-1 / 腸脳相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、重合体ポリフェノールによる消化管ホルモンと全身における代謝調節におよぼす影響を検討した。また、体内時計による生体リズムにも考慮して、上記の効果を検証することを目的とした。 本年度は、重合体ポリフェノールの生体調節機能は、GLP-1が分子ターゲットとなり、高血糖を抑制したり、エネルギー代謝を促進する作用に加え、摂食を抑制することも新たに見出した。その経路には迷走神経つまり、神経系が関与していることを明らかにし、腸脳相関関係の一助となる成果を得た。さらに、GLP-1を介してNOを上昇させ、血流改善、血管機能の向上にも寄与していることがわかった。STC-1に直接重合体ポリフェノールを作用させた場合にも、重合体ポリフェノールを豊富に含む組成物はGLP-1分泌を有意に上昇させることを確認した。また、高血糖抑制とエネルギー代謝促進効果は、投与するタイミングによって異なること、その際に重合体ポリフェノールは肝臓での時計遺伝子を変化させることも確認するとともに、これにGLP-1が関与している可能性を示唆するデータを得た。一方で、GLP-1受容体の阻害剤の前処理によってこの作用はキャンセルされた。 分子標的を見出す方法の一助として、プロシアニジン4量体に標識をラベルした化合物の合成に一部着手した。以上のことから、本年度までの研究の遂行により、重合体ポリフェノールが消化管ホルモンをターゲットとして、全身の代謝調節に機能している作用機構の一端を明らかにするとともに、さまざまな作用にGLP-1がキーとなっていることを見出すことができた。また、その効果には時計遺伝子にも作用していることを明らかにした。また、その分子ターゲットを同定するための合成方法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は当初の計画以上に進展したと判断した理由は、本研究で設定した3つの課題に対し、 1)重合体ポリフェノールによる消化管ホルモン調節・自律神経系刺激(腸脳相関)作用の解明については、腸脳相関には、GLP-1がキーとなり、迷走神経を介して脳に作用していることを明らかにした。その結果、摂食中枢や血管機能にも作用することも明らかにすることができ、概ねの研究は完了させることができた。STC-1にプロシアニジンを作用させた場合、GLP-1分泌が有意に上昇することも確認できた。 (2)重合体ポリフェノールの時計遺伝子とエネルギー代謝との関係性の解明に関しては、投与するタイミングを変えた場合、マウスの活動期後期から休眠期の開始時にかけて高血糖抑制効果やエネルギー代謝促進効果が最も強いことがわかった。また、効果の認められたタイミングに重合体ポリフェノールを投与した場合では、肝臓での時計遺伝子の発現が変化していた。さらに、STC-1の分泌能にも違いがあり、これが肝臓での時計遺伝子に作用している可能性を示唆するデータを得ることができ、作用機構の一端を究明することができた。また、GLP-1受容体の阻害剤を用いた評価、培養細胞での詳細な作用機構の解明にも着手することができ、研究は大いに進んだと判断できる。 (3)初発標的分子と活性本体の解明に関しては、重合体ポリフェノールの効果的な標識ラベル方法を検討することが大変重要性を持つ。そこで、目的の部位に標識をラベルするとともに、高重合なポリフェノールを合成するための方法を検討した。この方法の構築により、次年度には分子ターゲットを探索するための評価系確立に用いる基盤ができたと考えられた。 以上のように、研究の目的は概ね明らかにすることができるとともに、残された課題を解決するための手段も構築できたことから、研究は昨年以上に順調に進んだと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
残された課題は、2つあり、1つはGLP-1を介して、交感神経ホルモンを分泌するか否か?(課題(1))また、それを介してエネルギー代謝に関わる因子を増加させるのか、もしくはGLP-1が直接エネルギー代謝関連因子を調節しているのかを明らかにすることである。これに関しては、GLP-1受容体阻害剤を作用したものとしないものでの交感神経ホルモン量を測定するとともに、エネルギー代謝関連因子を調べる。すでに動物実験は終了しており、残りは血液マーカーの測定と組織での作用機構についての解析を進めることで、最終年度の実験完了へ繋げられると考えている。2つめの課題は、どのようにして、高重合なプロシアニジンはGLP-1の分泌を増加するのか?(課題(3)) その分子標的を明らかにすることである。すでにラベル標識したプロシアニジンの合成に着手していることから、これを用いてSTC-1細胞に作用させ、分子ターゲットの同定に着手する予定である。ターゲットが明らかになれば、それをサイレンシングして効果がキャンセルされるか否かを確認する。動物実験においても、全身投与用のAteloGene Local Use (Koken Co. Ltd, Tokyo, Japan)を用いて、たんぱく質特異的なsiRNAを投与することで目的たんぱく質をサイレンシングする方法をすでに確立していることから、この評価系を用いて、プロシアニジンによるGLP-1分泌経路に関わる分子ターゲットの確認も実施できると考えている。この2つを完了させることで、網羅的に研究を考察し、とりまとめ、研究課題を完了させる。研究成果は学術論文に報告するため、すでに現在執筆準備を進めているところである
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Research Products
(8 results)