2017 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンB12欠乏による酸化ストレス障害の発症機構の解明
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17K15270
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
美藤 友博 鳥取大学, 農学部, 助教 (20776421)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ビタミンB12 / 酸化ストレス / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、高齢者で多発するビタミンB12(B12)欠乏症の発症メカニズムの解明が求められている。これまでにヒトのモデル生物である線虫(C. elegans)を用いて、B12の欠乏が著しい酸化ストレス障害を誘発することを明らかにした。酸化ストレスと「老化」の密接な関連性はこれまでに種々の報告がなされているが、「B12と老化」の関連性は不明であり、B12の老化制御機能を明らかにすることを目的とし本研究を遂行している。 まずは、B12欠乏で応答を示す酸化ストレス関連遺伝子を探索した結果、B12欠乏でレドックス制御機構において重要な機能を果たすスーパーオキシドディスムターゼ(SOD, sod-3)およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST, gst-10)の遺伝子発現が顕著に減少していた。ウエスタンブロット法によるタンパク質発現を検討した結果、SODおよびGSTはB12欠乏でタンパク質発現の減少を示した。 しかし、抗酸化物質(グルタチオンおよびビタミンC)を供給したB12欠乏線虫では、sod-3とgst-10の遺伝子発現およびタンパク質発現が回復傾向を示したことより、B12欠乏による酸化ストレス障害でSODおよびGSTの遺伝子・タンパク質発現の変動が見られたと考えられる。 非常に興味深いことに、本研究を遂行する中でB12欠乏線虫は著しい運動機能の低下を示すことが明らかになった。抗酸化物質(グルタチオンおよびビタミンC)を供給したB12欠乏線虫では、運動機能の低下が回復したことより、この運動機能の低下もB12欠乏による酸化ストレス障害に起因することが推察された。現在は、このB12欠乏による運動機能の低下の詳細なメカニズムの解析についても視野に入れながら研究を推進させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、平成29年度はB12欠乏による酸化ストレス障害の詳細な発症メカニズムの解明を含め、B12欠乏で応答する酸化ストレス関連遺伝子の探索を主として推進させる予定であったため、おおむね進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の本研究では計画通り、B12の寿命制御機能を明らかにするために、B12欠乏で寿命延伸および寿命短縮に関連する遺伝子の中から応答するものを探索する予定である。また、RNAiで寿命短縮線虫を作製し、B12を添加した条件で生育させると寿命にどのような影響を与えるのかも検討する。さらに、本研究で見出したB12欠乏線虫の運動機能障害の詳細な発症メカニズムの解明も視野に入れ、B12欠乏が筋肉の構築に関連する遺伝子の発現に及ぼす影響についても検討する予定である。
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