2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管マスト細胞の機能制御とアレルギー抑制に関わる腸内細菌の同定と食品開発への応用
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17K15276
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
笠倉 和巳 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 研究員 (00724577)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 腸管免疫 / 腸内共生菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、「腸管免疫系の恒常性維持におけるマスト細胞の役割」について①IgA産生、②腸管免疫系の恒常性時に重要な制御性T細胞および樹状細胞の割合、③免疫寛容成立におけるマスト細胞の役割をマスト細胞欠損マウスと野生型マウスを比較することにより評価した。 ①マスト細胞が存在しないマスト細胞欠損マウスではマスト細胞が存在する野生型マウスと比較して糞便中のIgA抗体価が高いことを明らかにした。 ②マスト細胞欠損マウスおよび野生型マウスより腸間膜リンパ節を採取し、食物アレルギーの抑制にも関わるCD4+CD25+Foxp3+の制御性T細胞T細胞の割合をフローサイトメーターで解析した結果、マスト細胞欠損マウスでは制御性T細胞の割合が有意に低いことが判明した。さらに、腸間膜リンパ節で制御性T細胞の誘導に関わっているCD11c+MHCII highCD103+の樹状細胞の割合がマスト細胞欠損マウスで減少していることも明らかになった。 ③②で示したCD4+CD25+Foxp3+の制御性T細胞およびその誘導に関わるCD11c+MHCIIhighCD103+の樹状細胞は食物アレルギー発症抑制に関わる「経口免疫寛容」の誘導に重要であることが報告されている。そこで、それらの割合が減少しているマスト細胞欠損マウスでは経口免疫寛容が成立しにくいのではないかという仮説を立て、解析した。マスト細胞欠損マウスおよび野生型マウスにOVAを経口投与し、その後OVA/水酸化アルミニウムの腹腔投与により免疫した。免疫前後の血中OVA特異的IgE抗体価をELISAで測定した。野生型マウスでは免疫前にOVAを経口投与することにより、免疫後のOVA特異的IgEの上昇が抑制され、経口免疫寛容が成立した。一方、マスト細胞欠損マウスでは、OVAの経口投与によるOVA特異的IgEの上昇が抑制されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管免疫系の恒常性維持におけるマスト細胞の関与をマスト細胞欠損マウスと野生型マウスを用いて解析し、感染防御に重要なIgA産生、過剰な免疫応答の制御に働くFoxp3+制御性T細胞およびそれを誘導するCD103+樹状細胞がマスト細胞により制御されていることを見出すことができた。さらに、マスト細胞が経口免疫寛容の誘導にも関与していることを示すことができた。これは、経口免疫寛容成立に重要な細胞群に影響した結果であることを示唆しており、当初計画していた細胞の割合の解析だけでなく、機能解析にも取り組み整合性のとれた結果を得ることができた。29年度に予定していた腸内細菌叢の構成におよぼすマスト細胞の役割については、野生型マウス、マスト細胞欠損マウスおよびマスト細胞欠損マウスにマスト細胞を移入し再構築したマウスより糞便を採取し、次世代シーケンサーを用いて菌叢解析を行い、野生型とマスト細胞欠損マウスでは腸内細菌叢の構成が異なること、また、マスト細胞欠損マウスにマスト細胞を再構築したマウスでは野生型の構成に一部戻る結果を得ているが、データ解析が不十分であるため現時点では明確な結論が出ていない。 以上、一部の解析を次年度に持ち越したが、ほぼ計画通りに進んでいるため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成30年度は、まず菌叢解析のデータをまとめマスト細胞がどのような腸内細菌をコントロールしているのか明確にする。また、1年目にマスト細胞が関与する現象として見出したIgA産生やFoxp3+制御性T細胞、CD103+樹状細胞は腸内共生菌により制御されていることが報告されていることから、マスト細胞欠損マウスでみられた現象が腸内細菌叢の構成を変化した結果みられたものであるのか総合的に考察する予定である。また、計画書通り腸内共生菌をコントロールすることによりマスト細胞の活性化依存的なアレルギー応答がどのような影響を受けるのか腸内共生菌の存在しない無菌マウスなどを利用して解析する。
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Research Products
(24 results)