2017 Fiscal Year Research-status Report
食品における結合態D-アミノ酸の分布と異性化を促進させる要因の解析
Project/Area Number |
17K15279
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 勇門 大阪工業大学, 工学部, 講師 (90570838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 結合態D-アミノ酸 / 食品ペプチド / 異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
予備検討にて結合態D-Valの含有が示唆された食品ペプチドについて、製造段階毎のサンプルを酸加水分解後にUPLC分析することでアミノ酸のDL分割と定量を行った。その結果、予備検討と同様に製品サンプルではValのD/D+L比が25.8%という非常に高い値を示した。またVal以外のアミノ酸については、D体はほとんど検出されなかった(Aspが8%、AlaとSerは1%程度)。当初、原料サンプルには結合態D-Valはほとんど存在せず、製造工程において異性化が進行しているのではないかと予想していたが、予想に反し、原料サンプルにおいてもValのD/D+L比は17.2%と高い値であった。しかしながら、ValのD/D+L比が有意に上昇する工程も見出しており、この工程以降のサンプルではVal以外にAsp、Ser、AlaのD/D+L比もわずかに上昇していた。現在、この工程における操作や試薬について解析を進めており、Valの異性化を促進する要因を検討している。 また結合態D-Val含有ペプチドの加水分解物をLC/MSを用いて分析したところ、D-Valの溶出位置にValの質量と一致するピークが検出されたことから、UPLC以外の解析でもD-Valの存在を確認することができた。 合成ペプチド(Aspのジペプチド)を用いて、加熱処理の異性化への影響について分析した。AspのLLジペプチドを精製水、1 M HCl、1 M NaOHに溶解し、加熱処理(100℃、30分)とオートクレーブ処理(121℃、30分)を行った。処理後、NBD-Fを用いて誘導体化し逆相カラムを備えたHPLCにて分析した。その結果、アルカリ性条件下では加水分解よりもペプチド状態での異性化の方が進行しやすいこと、逆に酸性条件下では加水分解が進行しやすく、ペプチド状態での異性化はほとんど起こっていないことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、まず結合態D-Val含有ペプチドについて製造段階における動態解析を進めた。その結果、異性化が促進されている可能性を示唆する製造工程を見出すことができ、この点においては順調に進展していると考えている。またこの工程では加熱処理(100℃での加熱)は行われていないため、加熱以外に異性化を促進する要因が存在する可能性を示唆しており、新たな知見を得られることが期待できる。 LC/MSを用いた分析法により、ペプチド酸加水分解物中にD-Valの存在を確認することができた。しかしながら重塩酸-重水を用いた酸加水分解については、平成29年度内での検討はできておらず今後の課題である。 また肉や魚などの食材に由来するタンパク質中の結合態D-アミノ酸に関する解析については、29年度内で実施することができていない。そこで、30年度以降での実施を予定していた合成ペプチドを用いた結合態アミノ酸の動態解析を前倒して実施した。まず29年度はAspジペプチドを用いて、加熱処理の影響を解析した。HPLCによりAspジペプチドを光学分割するための条件検討を行い、同一の光学活性をもつジペプチド(DD、あるいはLL)と異なる光学活性をもつジペプチド(DL、あるいはLD)を分離することに成功した。この条件を使用して熱処理したLLジペプチドの分析を行った結果、酸性条件下では加水分解が起きやすく、一方アルカリ性条件下ではペプチド状態での異性化の方が進行しやすいことを明らかにすることができ、順調に進行しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
結合態D-Val含有ペプチドの解析については、29年度で行った解析を再度実施するとともに、異なる原料サンプルや製造工程の異なる製品サンプルの分析などの解析を進める。また29年度の解析で明らかになった結合態D-Valが増加する製造工程で行われている操作や使用されている試薬について解析を進め、異性化を促進する要因を明らかにしていきたいと考えている。 LC/MSでの解析については、重塩酸-重水を用いた酸加水分解について検討し分析法を確立する。 30年度は食材、特に肉(トリ、ブタ、ウシ)を対象としてタンパク質を抽出し、結合態D-アミノ酸が存在するか解析していく。また加熱した肉についても同様に解析を行い、加熱により結合態D-アミノ酸が増加するのかどうか解析を行う。 合成ペプチドを用いての解析については、加熱処理時のpH、温度などの条件をさらに変更し、ペプチド状態での異性化に関する知見を集める。また加熱以外の処理(UV照射、電子レンジなど)も実施しペプチド状態での異性化が進行する処理法を検討していく。さらにAsp以外のジペプチドやトリペプチドを対象とした分析も進めていきたい。
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Causes of Carryover |
支払い請求書の作成において、平成29年度の未使用見込額として1万円と申請しました。しかし実際の残高は8,353円となり29年度内で8,000円分の物品を購入するよりも、翌年度分と合わせて物品を購入した方が余分な物品を購入することにならないと判断したため、繰り越すことにしました。
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