2017 Fiscal Year Research-status Report
浸潤性増殖能を指標としたデスモイド腫瘍発症を予防し得る食品因子の探索
Project/Area Number |
17K15280
|
Research Institution | Sasaki Foundation |
Principal Investigator |
宮本 真吾 公益財団法人佐々木研究所, 附属研究所, 研究員(移行) (50752705)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | デスモイド / APC / 浸潤 / 食品因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
デスモイド腫瘍は軟部組織腫瘍に分類される線維腫の一種であり、筋線維芽細胞由来であると考えられている。組織学的に良性所見と認めるが、臨床的特性が悪性に近く、転移は認められなくとも増殖が早く、周辺組織に大きく浸潤性の発育をすることから主要組織が圧迫され、死に至ることも多い。悪性腫瘍に準じた摘出手術が標準療法とされてきたが、その浸潤能の高さから、高い再発率と大きな組織欠損が問題となっている。さらに、外科手術による機械的刺激が更なる腫瘍の再発を引き起こす可能性があることから、発症予防あるいは薬物治療が強く望まれているが、未だ標準的な治療法は確立されていない。 そこで、我々はalpha-SMA を発現しているMin マウス腸ポリープの間質細胞を利用し、薬剤スクリーニング系に利用可能なデスモイド腫瘍様細胞株の樹立を試みた。Min マウスの小腸からポリープを摘出し、免疫不全(NOD/SCID) マウスに皮下移植を2回繰り返すことで、シャーレ上で培養できる増殖性の強い線維芽細胞細胞を得ることができた。この増殖性線維芽細胞を再度NOD/SCIDマウス皮下へと移植して確認したところ、デスモイド腫瘍様の組織像を認めた。一方で、デスモイド腫瘍とは違った組織型を呈している部分も一部分に見受けられたことから、まだ多様性を有していると考えられた。そこで限界希釈法でクローニングを行い、臨床上のデスモイド腫瘍の特徴に合致する細胞株の選択を行った。クローニング後に得られたデスモイド腫瘍様細胞株におけるマーカー分子の発現をWestern blotting法により検討したところ、上皮性のマーカーを発現しておらず、alpha-SMAおよびvimentinを強く発現している細胞株を2種得ることができた。現在これら細胞株が生体内でデスモイド腫瘍様の組織像を形成するかどうかを確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度において所属機関の異動があり、異動前後の期間は研究の遂行が困難な状況が発生した。しかし、すでに順調に研究を進められる環境が整ったことから、今後の進捗に問題は無い。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでのクローニングにより得られた4種類の細胞株(上皮性のマーカーを発現しておらず、alpha-SMAおよびvimentinを強く発現している2種類の細胞株を含む)を、NOD-SCIDマウス皮下に移植し、得られた皮下腫瘍の病理学的な解析を行う。具体的には、H&E染色した組織像を検鏡後、浸潤像を確認し、更にデスモイド腫瘍の特徴である膠原線維の存在をマッソントリクローム染色で検討する。さらに、in vitroで、実際にデスモイド腫瘍の治療薬として用いられているcelecoxibとsulindac sulfideによる増殖抑制作用およびアポトーシス誘導作用についても検討する。in vivoの組織像および in vitroの治療薬に対する感受性から総合的に判断し、これら細胞株がデスモイド腫瘍様細胞であることを確認する。 得られた細胞株がデスモイド腫瘍の性質を有すると確認できた場合、浸潤能と増殖能に対する抑制作用について、網羅的な食品因子のスクリーニングを行う。浸潤能は細胞外基質をコートしたメンブレンを通過してくる細胞数を測定するCytoSelectTM 96-well Cell Invasionアッセイキットにより、増殖能は一般的なMTTアッセイにより評価する。評価の際には、現在臨床で利用されているスリンダックやメトトレキセートを基準とし、各化合物の有効性を比較することで、将来的な臨床応用も視野に入れた検討になると考えている。入手した全化合物でのスクリーニングを行い、浸潤抑制と増殖抑制を個別に評価すると共に、増殖細胞数で調整を行った純粋な浸潤能の増減指標を設けて総合的な判断を行う。
|
Causes of Carryover |
平成28年度において所属機関の異動があり、異動前後の期間は研究の遂行が困難な状況が発生した。そのため、計画にやや遅れが生じ、細胞株を移植したマウス生体内での組織の解析まで進まなかった。そのため、解析分として見積もっていた額を次年度に持ち越すこととなった。しかし、現時点において、すでにマウスの皮下腫瘍が確認できていることから、研究自体は順調に進んでおり、前年度に予定していた組織解析とともに、今年度の計画を進めていく予定である。
|