2017 Fiscal Year Research-status Report
Inference of population demographic history of Betula ermanii along altitudinal gradients: implications for future adaptation to global warming
Project/Area Number |
17K15282
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津田 吉晃 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40769270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カバノキ属 / ダケカンバ / 遺伝構造 / 集団動態の歴史 / 気候変動 / ゲノム情報 / 集団遺伝学・ゲノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
カバノキ属樹種は冷温帯~亜寒帯を代表する先駆樹種である故に、今後の気候変動に鋭敏に反応し、分布をシフトすると考えられる。そのため、カバノキ属樹種は今後危惧される温暖化などの気候変動の影響評価に適した樹種であると考えられる(津田2018)。そこで本研究では国内では中部山岳等の高標高域から北海道の海岸低地にまで標高差約3000mに適応して分布するカバノキ科カバノキ属ダケカンバ(Betula ermanii)に着目している。具体的には本研究では本種を対象に最新の集団遺伝学的手法を用いて、ダケカンバの遺伝構造および集団動態の歴史を推定し、さらに環境適応した遺伝的変異の検出を行っている。そして、これら情報からダケカンバの分布シフトおよび非適応リスクを評価し、環境変動が冷温帯林~高山帯の生態系に与える影響に関するケーススタディとすることを目的としている。平成29年度には実験試料であるダケカンバの採取を行った。日本国内のダケカンバの集団動態の歴史については申請者の先行研究(Tsuda et al. 2017)で公表された遺伝データ、最新の解析法(Navascues et al. 2017)を用いて再解析することにより、最近の集団拡大などの変動について詳細に評価できた。さらにヨーロッパシラカンバのゲノム情報に関する論文が発表されたため(Salojarvi et al. 2017)、これら情報の本研究の応用し、より大規模な遺伝データを用いる解析法について検討した。また本申請の取り組み含めて、ユーラシア大陸~日本におけるカバノキ属樹種の遺伝構造および集団動態の歴史推定に関する申請者のこれまでの研究の取り組みを日本森林学会の一般向け雑誌“森林科学”で紹介した(津田2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度に4か月の育児休業を取得したため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は日本国内のダケカンバ分布域を網羅するようなサンプリングを本格的に行う。具体的には四国の石鎚山などの分布西限地域から紀伊半島、中部山岳地域、東北地方、北海道の主要山脈・山地および独立峰を対象とする。これらサンプルを対象に遺伝的多様性の違いや最近の集団動態の歴史を簡易的に評価できる核マイクロサテライト遺伝子座を用いて、遺伝構造を評価する。またこれらデータに申請者の先行研究データ(Tsuda et al. 2017)を追加し解析することで、ユーラシア大陸スケールでみた日本のダケカンバの遺伝的特徴も明らかとする。さらにカバノキ属のゲノムデータ(Salojarvi et al. 2017)が公表されたことから、平成30年度はリーシクエンス法を用いた大量遺伝解析を行い、より長い時間スケールでのダケカンバの標高に着目した適応およびそれに関連した集団動態の歴史の推定を行う。ここで突然変異率が高いマイクロサテライトとリシークエンスデータから得た突然変異率が低い一塩基多型の両方を用いることで、過去から現在までの時空間スケールにおけるダケカンバが辿ってきた歴史および過去の気候変動との関係を詳細に評価できると期待できる。 将来の気候変動の影響評価法の確立にも着手する。種の分布を推定するモデルにはこれまで実際の対象種の移住率などは考慮されていなかったが、最近ではこのような移住率も考慮し、よりフレキシブルに種の分布可能域について評価可能となってきた(Nobis and Normand 2014)。このようなアプローチに実際の遺伝データから推定した集団の移住率、生長率なども考慮できるように改変する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に4か月間の育児休業を取得したため、当初の予定通り実験等を遂行できなかったために、次年度使用額が生じた。平成30年度は調査旅費、実験費および大量遺伝子解析にこれら助成金を充てる予定である。
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Research Products
(2 results)