2019 Fiscal Year Annual Research Report
Inference of population demographic history of Betula ermanii along altitudinal gradients: implications for future adaptation to global warming
Project/Area Number |
17K15282
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津田 吉晃 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40769270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝構造 / 葉緑体DNA / 核DNA / 標高 / 適応 / 生残 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内では中部山岳等の高標高域から北海道の海岸低地にまでに適応して分布するカバノキ科カバノキ属ダケカンバ(Betula ermanii)を対象とし、分布域全体および地域内標高別に採取したダケカンバの遺伝構造および集団動態の歴史を推定し、過去から将来の分布および環境適応動態を予測することを最終目的とした。本州中部~東北地方で顕著に高い19の山岳地に着目し、標高別にサンプル採取を行い、また水平方向の遺伝構造も評価できるように50集団以上を採取した。これらサンプルについて母性遺伝する葉緑体ゲノムの遺伝的変異を調べた。その結果、水平方向では関東北部あたりを堺にしてその南北で遺伝的に異なるグループが分布しており、冷温帯樹木、高山植物などに似た遺伝構造が検出された。地域内標高別にみた場合には、ほとんどの山では標高間に明確な遺伝構造がないことがわかった。但し、長野県の中央アルプスの一部山岳地域では標高ごとに遺伝構造が異なるパターンがみられ、高標高集団ほど遺伝的多様性が高い傾向がみられた。さらに同じ標高帯でも開葉時期が異なる個体は、葉緑体DNAハプロタイプも南方系統、北方系統と異なることがわかった。これについては詳細な検証が必要であるが、約2万年前の最終氷期最盛期前後の分布変遷に関連し、中部山岳に生残した北方系統集団が、長期に渡り、環境に適応せず、また南方系統と交わることなく、細々と生き延びていた可能性も示唆された。また過去の分布復元から日本には最終氷期最盛期にもダケカンバが生残できた可能性が高い場所が複数個所あることがわかった。現在、核ゲノム情報結果とこれら結果の統合を進めているが、ダケカンバはその耐寒性から独自の分布変遷の歴史をもち、”環境に適応しない”という生残戦略も含めて現在に至っていること、今後の分布移動の遺伝的多様性には高標高集団が鍵となる可能性が高いことがわかった。
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Research Products
(2 results)