2017 Fiscal Year Research-status Report
アカマツの菌根菌群集における多種共生系維持機構に関する実験的研究
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17K15284
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
門脇 浩明 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (30643548)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 菌根菌 / 共生 / 競争 / 多種共存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アカマツにおける菌根菌をモデル系として、異なる種類の菌類がなぜ同じ植物体上で共存できるのかについて明らかにすることである。一年目の重要な課題は、そのための実験計画を具体化させ、実施へ移す段階まで進めることである。具体的に、一年目では、フィールド調査を行い、野外でのアカマツの種子の収集、実生の育成、アカマツの菌根菌子実体の収集と保存を行った。研究協力者や専門家を交えた意見交換を5度行った。そこでは、実験に用いる菌根菌の選定基準を決めた。その種類は、栄養条件を変えて育てたアカマツに接種することで共生能力が異なる様々な系統を選抜することで作出を試みた。くわえて、同位体トレーサーの専門家との協議により本実験の着実な遂行には、計画書の段階では予定されていなかった別の予備実験が必要であることも明らかになり、現在、その予備実験に向けた実生の育成を進めている段階である。これらは2年目の本実験に向けた準備に相当する。今後は、栄養塩濃度に対する菌の選抜実験により得られた系統を確立し、それらの系統から共生能力の最も異なるものを選び出すことが重要なステップとなる。そのうえでトレーサーを用いて炭素の窒素の転流量を計測することで、どのように共生能力の異なる多様な菌根菌が同じ植物個体において共存できるのか、そのメカニズムの一端を明らかにすることができるのではないかと考えている。また、菌根菌の共生と競争のダイナミクスをモデル化し、そのモデルに基づき得られた結果の意義することも重要であるため、共生関係の安定性に関連する文献と既存のモデルについて包括的な調査を行い、本研究に利用可能なモデルのスクリーニングも実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トレーサー実験の実施部分では、アカマツの実生の育成が律速条件となり、栄養塩濃度に対する菌の選抜実験の実施を延期することとなった。実生育成の環境条件(容器・温度・光環境)を見直し、さらに育成する実生の数を増加させることで、この問題に対処したいと考えている。トレーサー実験の計画や準備を整えておくことで、スムーズに本実験の実施に取り掛かれるようにしていくことが重要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、栄養塩濃度に対する菌の選抜実験、トレーサー実験に用いる安定同位体の封入量とその収穫のタイミングを決定するための予備試験を実施することが最重要課題である。そのためにはアカマツ実生を実験に適用できる程度のサイズまで十分に育成することが必要となる。それでも実施が困難である場合は、研究計画書にしたがい、モデル系を変更し実験を実施するなどの対策を行う。トレーサー試験の結果をとりまとめる際には菌根菌の共生と競争のダイナミクスをモデル化し、そのモデルに基づき得られた結果の意義を考察する。そこでは数理モデルの専門家との協議や共同研究が必要となってくると考えられる。
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Causes of Carryover |
トレーサー実験の実施部分では、アカマツの実生の育成が律速条件となり、栄養塩濃度に対する菌の選抜実験の実施できていない。その部分が次年度に持ち越しになったことにより、繰越金額が生じた。
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