2020 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of the loss of large animals on figs on Borneo
Project/Area Number |
17K15285
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中林 雅 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 助教 (70770858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 種子散布 / 空洞化 / 小型種子 / イチジク / 大型動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため、2020年度は調査国マレーシアに渡航することができなかった。そのため、2019年度までにおこなった野外調査で取得したデータをまとめ、1件の国内学会で発表をおこなった。また、渡航できなかったため発表代理人を立てて、2019年度に1件の国際学会で発表した。また、本研究の一部が1本の国際雑誌に掲載された。 本研究では、健全な森林、大型動物を喪失した空洞化した森林、近年大規模な伐採を受けた二次林、の3か所でイチジクの密度を比較した。対象としたイチジクは、宿主となる木の樹冠で発芽・生長する半着生性イチジクと、地面で発芽するが宿主となる植物を体の支えにするつる性である。3か所の調査地に50ヘクタールのプロットを各1か所設置し、25m間隔で作成したトランセクト上を踏査して、発見したすべての対象イチジクの種を記録し、種数と密度、果実(果嚢)サイズを比較した。 その結果、健全な森林と近年大規模な伐採を受けた二次林では種数、密度、果実サイズともに有意差はなかった。空洞化した森林の調査は未完成の段階で中断したが、種数、密度、果実サイズのすべてが他の森林よりも小さい(少ない)ことが分かった。 本研究により、大型種子散布動物を喪失した森林では、イチジク属の種多様性や密度に影響があることが分かった。このことから、種子サイズが小さい植物でも大型種子散布動物の喪失による影響は無視できないことが示唆される。また、近年伐採の影響を受けても、大型動物が生息していれば、イチジク属の種子散布機能は喪失していないことも分かった。本研究は、小型種子をつける植物は森林の空洞化の影響を受けにくいという従来の考えを覆すものであり、大型動物の保全の意義を明確に主張する証拠となり得る。
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