2017 Fiscal Year Research-status Report
セルロース系多糖/ビニルポリマーの微視的複合化法の新規開拓と機能材料設計
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17K15295
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 和紀 京都大学, 農学研究科, 助教 (30711783)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セルロース / 多糖類 / ブレンド相溶性 / アミド基 / 分子間相互作用 / ブロック共重合体 / 相溶化剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロース系多糖とビニルポリマーとの微視的複合化ペアの拡充・機能化を目的に,各種ブレンド系の相溶性と分子間相互作用の評価を行い,以下の成果を得た。 A. アミド基含有ビニルポリマーとのブレンド相溶性評価 キチンプロピオネート(ChP)と,N-ビニルピロリドン-ビニルアセテート共重合体(ランダム共重合体,P(VP-co-VAc))を数種ずつ調製し,ChP/P(VP-co-VAc)ブレンド系の相溶マップを作成した。セルロースプロピオネート(CP)系との比較から,ChPの2位アミノ基の寄与によりP(VP-co-VAc)との相溶領域が拡大することを見出した。 B. セルロースエステル/ジブロック共重合体ブレンドにおけるミクロ相分離 セルロースエステル類と相溶なPVPと,非相溶なPVAcから成るジブロック共重合体(PVP-b-PVAc)の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合による合成,ならびにNMRとGPCによるキャラクタリゼーションを確立した。セルロースアセテート(CA)とのブレンドフィルム(肉眼下で透明)では,PVAcドメインとCA-PVPの相溶ドメインから成る数十nmスケールのミクロ相分離構造が形成されていることを,熱分析から確認した。そのドメインサイズと形態はブレンド組成に応じて変化することが,TEM観察より明らかとなった。 上記に関連して,置換度と置換基分布の異なるCPとケン化度の異なる親水性ポリビニルアルコール(PVA)から成るブレンド系の相溶性を評価し,該ブレンド系の良相溶化には(1)CP・PVA両成分が水酸基を豊富に含むこと,(2)プロピオニル基が適度に6位に偏在したCPを用いること,の2点が必要であることを見出した。また,無機物(磁性酸化鉄やバイオミネラルCaCO3)とのハイブリッド化を行い,セルロース系材料の機能化(耐熱性向上,etc.)にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では,セルロース系多糖/ビニルポリマーの微視的複合化に関して,(A)アミド含有ビニル(コ)ポリマーまたは(B)ジブロック共重合体とのポリマーブレンド系における,混合スケールと分子間相互作用の評価を行っている。前者Aについては,アミノ多糖であるキチンのエステル誘導体とビニルコポリマーとの相溶マップが完成しつつあること,さらにはセルロース系との比較により,ピラノース環2位のアミノ基とビニルポリマーとの分子間相互作用が相溶化に必要であることを見出したことから,きわめて順調である。また,後者Bにおいても,セルロースエステル類と相溶なビニル鎖と非相溶なビニル鎖から成るジブロック共重合体の合成に成功しており,さらにはセルロース誘導体とのブレンドによってミクロ相分離構造の形成・制御が可能であることを明らかにしていることから,順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
「アミド含有ビニル(コ)ポリマー」とのポリマーブレンドにおいては,キチンプロピオネートChP/N-ビニルピロリドン-ビニルアセテートランダム共重合体P(VP-co-VAc)ブレンド系の相溶マップの作成を進めるとともに,2位アミノ基と3・6位水酸基における置換度が異なるChP試料を取り揃え,ブレンド相溶性と分子間相互作用に及ぼす影響についてより詳細に検討する。また,アミド基の等級・構造(直鎖状 or 環状)の異なるビニルポリマーとセルロースエステル類との相溶性を調査する。「ジブロック共重合体」を用いた微視的複合化では,反応条件を制御して共重合組成やブロック鎖長の異なる試料を取り揃えてミクロ相分離構造への影響を検討するとともに,光学・力学物性といった材料特性を評価する。
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Causes of Carryover |
実験器具・試薬類を安価に入手できたため。 アミド基の構造(等級や,直鎖状・環状)が異なる各種ビニルポリマーの準備(モノマーからの重合や市販試料としての購入,誘導体化)の費用に充てる。
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