2018 Fiscal Year Research-status Report
内湾からの栄養塩流失の鍵を握る準易分解性溶存有機物の動態の解明
Project/Area Number |
17K15302
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 志保 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60432340)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 溶存有機物 / 衛星情報 / 栄養塩管理手法 / 物理・生態系モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸海域において水質と生物生産性の両方を維持するために,各海域に適した栄養塩濃度レベルの管理が求められている。本研究では,貧栄養化に伴うノリ・ワカメの色落ちや貧栄養状態でも増殖可能な有害プランクトンによる被害が問題となっている東部瀬戸内海において,分解に数週間を要する準易分解性溶存有機物が海水交換によって内湾から流出することが,湾外への栄養 塩流失に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 平成30年度には,夏季の出水時における準易分解性溶存有機物の濃度を得るための現地観測を計画していたが,西日本に多大な被害をもたらした平成30年7月豪雨および夏季に多発した台風の影響を受け,予約していた船舶の使用が困難になり現地観測を予定通り行なうことができず,十分なデータは得られていない.目標とする河口域から海域への準易分解性溶存有機物の影響評価のために,平成31年度には出水時における準易分解性溶存有機物の濃度を得るための現地観測が必要になっている. また平成30年度には,前年度に海色衛星を用いて可視化した表層における低塩分水の流出を再現し,上層水全体の流出量を計算するため,対象海域に有限体積法による三次元沿岸海洋モデル(FVCOM; Chen et al., 2003, J. Atmos. Ocean Technol.)を適用した.大阪湾に設置されている検潮所と13基の水質定点自動観測塔から毎時の各種観測データ(水温,塩分,潮位,流速)を用いて,モデルのパラメータ調整を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には,夏季の出水時における準易分解性溶存有機物の濃度を得るための現地観測を計画していたが,西日本に多大な被害をもたらした平成30年7月豪雨および夏季に多発した台風の影響を受け,予約していた船舶の使用が困難になり現地観測を予定通り行なうことができず,十分なデータは得られていない.一方,上層水全体の流出量を計算するための三次元沿岸海洋モデルのチューニングは既存データを用いて完了しており,上記のデータを平成31年度に得ることができれば,目標とする海域への準易分解性溶存有機物の影響評価が可能になるため.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に実施できなかった出水時における準易分解性溶存有機物の濃度を得るための現地観測を平成31年度夏季に計画している. 平成30年度に対象海域に適用しチューニングを行なった有限体積法による三次元沿岸海洋モデルを用いて低塩分水の流出を再現し,数メートルの厚さの上層水全体の流出量を計算する. 解析した結果を統合し,湾外に流出する準易分解性溶存有機窒素の量を見積もる.またその流出量が,湾内への栄養塩(溶存無機態窒素)流入量の何割にあたるか計算し,準易分解性溶存有機物の生成が内湾の栄養塩循環に及ぼす影響を評価する.
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Causes of Carryover |
平成30年度には,夏季の出水時における準易分解性溶存有機物の濃度を得るための現地観測を計画していたが,西日本に多大な被害をもたらした平成30年7月豪雨および夏季に多発した台風の影響を受け,予約していた船舶の使用が困難になり現地観測を中止したため,研究費に残額が生じた.また平成30年度に得られなかった現地観測データを次年度に取得するため,次年度使用額を申請した. 次年度使用額は,2019年5~9月に予定している現地観測を行なうための旅費,傭船費,協力者に支払う人件費,観測・分析消耗品を購入するための物品費に充てる計画である.
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