2017 Fiscal Year Research-status Report
窒素循環に新たな1ページを加える第三の窒素ガス生成経路を担う微生物群の同定
Project/Area Number |
17K15305
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
押木 守 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (90540865)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 窒素循環 / ヒドラジン / 窒素ガス / 嫌気性アンモニウム酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
嫌気性アンモニウム酸化(anammox)細菌にヒドロキシルアミンを唯一の基質として与え、培養するとヒドラジン(N2H4)を合成し、つづいて窒素ガス(N2)を生成する。この窒素ガス生成には新規な代謝機構が関与していると考えられる。Anammox細菌がヒドロキシルアミンから窒素ガスを生成する反応について調査し、以下のことが明らかとなった。 ① pH、培養温度、基質(ヒドロキシルアミン)濃度がヒドラジン合成に及ぼす影響を調査したところ、pHはpH9、温度は37℃で最も反応が進行することを明らかにした。特に基質濃度が本反応に及ぼす影響は大きく、基質濃度1mM以上では反応活性が著しく低下することを明らかにした。② 基質濃度が活性に大きく影響することが明らかとなったため、培養液中のヒドロキシルアミン濃度を低濃度で維持しながら培養することを可能にする連続培養装置を新たに構築した。③ 上述の条件に基づき至適条件でanammox細菌を培養したところ、培養液中のヒドラジン濃度が上昇し、最大で0.6 mM以上を達成した。これはこれまでに報告されているヒドラジン濃度を上回る、世界最高値であり、本研究において、anammox細菌にヒドラジンを合成させ、続けて窒素ガスを生成させる反応の至適培養条件を明らかにした。④ 窒素ガス生成を担うタンパク質を明らかにするため、細胞粗抽出液を作成し、比活性試験を行なった。細胞を破砕する段階で著しく比活性が低下することを明らかにし、この比活性の低下を防ぐ必要があることが判明した。⑤ ヒドロキシルアミンを生物学的に生産するための培養装置の原理を新たに考案し、培養装置の試作を行ない、活性汚泥を用いたテストランを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
窒素ガス生成を担うタンパク質を同定し、触媒酵素をコードする遺伝子を同定するステップまでを目指していたが、細胞破砕によって比活性が著しく低下してしまうことが明らかとなった。この状況では、比活性に基づいて目的タンパク質の精製を進めることが困難である。そこで、細胞破砕時に還元剤やプロテアーゼ阻害剤を添加する、より温和な細胞破砕法を検討するといった作業を現在進めている。これ以外の研究項目については概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は窒素ガス生成を触媒する酵素を同定するための細胞破砕条件を最適化した後、液体クロマトグラフィーによって目的タンパク質を精製する。そのためにタンパク質精製条件について、精製担体、バッファー組成の検討を行う。精製タンパク質について質量分析法でタンパク質同定を行なうことで、触媒酵素をコードする遺伝子を同定する。 遺伝子を同定した後は、環境分布を明らかにするため、本遺伝子を標的とした遺伝子検出法を開発する。続いて、土壌等の環境試料を採取し、窒素ガス生成活性を測定した後、当該遺伝子の存在量および多様性について調査を行う。
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Causes of Carryover |
次年度に消耗品を購入するために確保することとしたため。次年度において消耗品を購入するために利用する。
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