2017 Fiscal Year Research-status Report
生鮮魚の生食から感染する新興寄生虫症コリノソーマ症の感染源特定
Project/Area Number |
17K15307
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
片平 浩孝 三重大学, 生物資源学研究科, 産学官連携研究員 (70722651)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人獣共通感染症 / 海産寄生虫 / 鉤頭虫 / コリノソーマ / 鰭脚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は北海道において患者数増加が懸念されるコリノソーマ症(鰭脚類を終宿主とする海産寄生虫Corynosoma spp.によって引き起こされる人獣共通感染症)について、感染源となる魚類(延長中間宿主)を網羅的に特定し、海域や季節性を考慮したリスク評価に結びつけることを目的とする。 研究開始年度である本年は、身近な生鮮魚として販売される魚種に加え、市場に出回らない魚種についても幅広く検査対象とした。本研究の遂行にあたり、天売・枝幸・小樽における地元漁業者との密な交流や小売店の活用を通じ、供試魚を定期的に確保する基盤作りを進めた。 現在も引き続き調査を継続中であるが、特にカジカ類においてCorynosoma strumosumおよびC. villosumの高い寄生レベルが認められ、中には両種の重複寄生も見られた。これらの魚種は北海道周辺に生息・来遊する鰭脚類の胃内容物として出現することを鑑みると、本属寄生虫の生活環を回すうえで重要な役割を果たしている可能性が期待される。 なお、両種(C. strumosumおよびC. villosum)の寄生部位は主に腸間膜上や腹腔内壁上であった。本属寄生虫は体サイズが小さいため、調理の状況によっては腹腔内壁上の虫体を容易に見落とす危険性がある。したがって該当する生鮮魚の調理に際し、虫体を虫体として視認するための注意喚起や混入を防ぐための調理手順を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
積極的なコミュニケーションの結果、地元漁業者とのより良い協力体制をもつことができ、供試魚を円滑かつ安価に入手できる状況を構築することができた。これに加え、年度末に協力者各位への経過報告会を実施し、本課題が目標とする「一般への周知」の方向性を模索する機会も得ている。以上の理由から研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 季節的採集の継続:ゴマフアザラシやトドに見られるような終宿主の季節的移動や繁殖に係る個体数変化に対応して、本属寄生虫の感染リスクは時空間的に変異していることが予想される。初年度で確認した好適宿主魚類について、特に我々が日常的に消費する魚種に絞って重点的に寄生虫検査を実施し、寄生レベルの変異性を海域別で検討する。 2) 統計モデルによるリスクの数値化:一連の検査から得られた全てのデータを用いて、コリノソーマ各種の寄生率・寄生数期待値を魚種別・海域別・季節別に推定する。
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Research Products
(2 results)