2017 Fiscal Year Research-status Report
効率的なワクチン製造に向けたウイルス感染細胞におけるアポトーシス誘導機構の解明
Project/Area Number |
17K15313
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
河東 康彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 研究員 (90634220)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マダイイリドウイルス / 培養細胞 / アポトーシス / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス性疾病のワクチン製造において、効率的なウイルス培養法は重要な課題である。マダイイリドウイルス(RSIV)では培養細胞によるウイルスの産生効率が低く、ワクチン製造に高いコストや労力を要している。本研究では、培養細胞によるRSIV高効率産生系の確立を目指し、ウイルス複製阻害要因の一つと考えられるアポトーシス誘導機構の解明を目的としている。 本年度は、RSIVがイシガキダイ由来培養細胞(SKF-9)に感染した際のウイルス産生量や感染状態の把握、宿主およびウイルスの遺伝子発現状況に関して、細胞のアポトーシスに着目した解析を進めた。 SKF-9に感染したRSIVは接種36~48時間後にかけて細胞内のウイルスゲノム数が増加し、48~60時間後にかけて培養上清中のウイルスゲノム数が増加していた。このことから本ウイルスの増殖サイクルは約60時間であると推定された。 RSIV接種後7日間経過したSKF-9では、全細胞の約60~80%が抗RSIVモノクローナル抗体(ウイルス複製時のタンパク質に反応し、ウイルス粒子には反応しない抗体)陽性となるが、抗RSIV粒子ウサギ抗血清には全細胞の約20~40%しか反応せず、最終的な粒子形成に至る細胞が少ないことが示唆された。しかしながら、Annexin VやTUNEL法による蛍光染色では、アポトーシスがウイルス感染を抑制していることを示唆するような結果は得られなかった。 RNAseqによる網羅的な遺伝子発現解析では、ウイルス感染細胞において免疫関連遺伝子やアポトーシス関連遺伝子の上昇が確認された。特にアポトーシスに関与すると思われる「caspase recruitment domain-containing protein」の発現量が未感染細胞と比べて約10倍上昇しており、この遺伝子の役割について興味が持たれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通りに、RSIV感染細胞におけるウイルスの複製動態を詳細に調べ、ウイルス感染細胞の多くでウイルス複製が阻害されている可能性を示した。また、ウイルス感染細胞におけるウイルスおよび宿主の遺伝子発現動態を網羅的に解析し、アポトーシス関連遺伝子や免疫関連遺伝子といったウイルスの複製阻害に関与すると思われる遺伝子発現量がウイルス感染細胞で上昇していることを確認した。しかしながら、フローサイトメトリーや蛍光顕微鏡におけるアポトーシス細胞の観察では、アポトーシスがウイルス感染を抑制しているという明確なデータを得るには至っていない。この原因が多重染色による技術的な要因が影響しているのか、実際にアポトーシスはウイルス複製阻害に関与していないのかどうかを慎重に見極めるために更なる検討が必要である。また、RNAseqによる網羅的な遺伝子解析では、ウイルス感染強度やサンプリング時期を振ったシーケンスを実施しており、大規模なデータ解析が必要となるためこの作業にも時間を要している。このことから、全体的な進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、蛍光染色によるアポトーシス細胞の観察を継続する。 当初の計画通りに、宿主およびRSIVのアポトーシス関連遺伝子のノックダウン試験を実施し、ウイルス感染時におけるこれら遺伝子の役割について評価する。また、アポトーシスがウイルス複製阻害に関与していない可能性も考慮し、RNAseqにより得られたデータの詳細な解析を進め、ウイルスの複製阻害要因となり得る遺伝子の探索を行う。
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Research Products
(2 results)