2018 Fiscal Year Research-status Report
大型魚類が卵を産むために必要となる栄養状態の解明とその応用
Project/Area Number |
17K15316
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
樋口 健太郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 研究員 (40577607)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大型多回性産卵魚 / 栄養状態 / 成熟 / 産卵 / 養殖 / ブリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大型多回性産卵魚について、一年のうちどういった時期の、どのくらいの栄養状態が良質卵を生産するうえで重要であるかをブリを用いた飼育実験により明らかにする。本年度はどういった“時期”の栄養状態が成熟・産卵に重要であるかを調べるため、成熟開始前あるいは成熟期等の異なる成熟段階の時期にそれぞれ餌を一定量削減する飼育実験を行った。肥満度及び血中の脂質含量を経時的に調べた結果、給餌量の削減に伴って肥満度及び血中の脂質含量ともに有意に低下したことから、各時期の給餌削減によって親魚の栄養状態が低下していることがわかった。成熟期に給餌量を削減した試験区のみで成熟の進行が抑制された昨年度の結果を考え合わせると、ブリの成熟の進行には成熟期の栄養状態が極めて重要であることが強く示唆された。他方、成熟開始前に給餌量を削減した試験区では産卵期に十分な成熟状態に達したためホルモン投与による産卵誘導を行ったところ、飽食給餌を行った試験区と遜色ない採卵数及びふ化率が得られた。このことから、成熟開始前の栄養状態は成熟の進行や産卵に大きく影響しないことが示唆された。 次に、栄養状態と繁殖特性に関連が認められた成熟期において、どのくらいの栄養状態が成熟・産卵に重要であるかを調べるため、成熟期の栄養状態を段階的に変化させる飼育試験を行った。具体的には、成熟期以前(7月から12月までの期間)に飽食給餌量に対して50%及び25%量を給餌する飼育試験を行った。肥満度及び血中の脂質含量を経時的に測定した結果、給餌量に応じて変化し、成熟期(1~4月)の栄養状態の低下が確認された。今後は、これらの栄養状態における繁殖特性を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブリを用いた飼育実験から、本種の成熟・産卵は卵形成が進行する成熟期の栄養状態に依存して進行することが明らかになった。このように、当該年度においては当初の計画通り研究は順調に進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、成熟期の栄養状態を段階的に変化させた飼育実験で得られたサンプルを用いて、産卵期である4月の卵巣重量や成熟誘導因子等を調べるとともに、ホルモン投与による産卵誘導を行い、得られた受精卵の総量やふ化率を調べることで、成熟期のどのくらいの栄養状態の低下が成熟・産卵の進行に影響を及ぼすかを明らかにする予定である。他方、当初計画では肝臓等の各組織における脂質含量を指標に栄養状態を評価する予定であったが、初年度の成果より血中の脂質含量により栄養状態を評価可能であること、簡便かつ低コストで分析可能であることから、今後は計画を変更して血中の脂質含量を指標に栄養状態を評価していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初は、実験魚を飼育するための餌料に費用がかさむことを想定していたが、昨年度までの購入分で十分であったため、本年度においては次年度使用額が生じることとなった。 次年度は、引き続き得られたサンプルを用いて成熟誘導遺伝子の発現解析や脂質分析を行うため、これらの分析に使用する試薬等に使用する予定である。
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