2017 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive investigation for the lectins from brown algae, based on their genome information
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17K15321
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平山 真 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (40535465)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海藻 / 褐藻 / レクチン / 糖鎖 / 食品 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
糖結合性タンパク質「レクチン」は、様々な生命現象に関与する重要なタンパク質であり、ウイルスからヒトに至る全ての生物が持つと予想される。一方、潜在的なバイオマス資源であり、私たちの食卓にも馴染みのある褐藻類においてはレクチンの単離報告は皆無である。本研究では、全ゲノム情報が公開されているオキナワモズク、シオミドロおよびマコンブの褐藻3種を対象にin silicoスクリーニングを行い、褐藻レクチンの単離・同定を試みた。まず、上記褐藻3種のゲノムデータベースを対象に、動物、植物、藻類、真菌および原核生物由来レクチンのアミノ酸配列を問い合わせ配列として、各種BLAST検索(E値カットオフ:0.001)に供し、レクチン様タンパク質遺伝子を探索した。その結果、各褐藻種につき、複数種の候補遺伝子が検出された。特に、糖タンパク質の品質管理に関与するcalnexin、calreticulinおよびM-type lectinと高い相同性を示す遺伝子が3種に共通して見出され、同様の機構が褐藻類にも備わっていることが示唆された。他方、藍藻Microcystis viridis由来レクチンMVLと相同性を示すレクチン様タンパク質遺伝子がオキナワモズクゲノムでのみみられた。興味深いことに、同遺伝子はイントロン構造を有さず、また藍藻由来のものと高い配列類似性(92%)を示すことから、遺伝子の水平伝播により獲得されたものと推察された。同遺伝子につき、常法に従い、大腸菌発現系を用いた組換え体調製を行ったところ、収量は培養液100 mLあたり17.5 mgと比較的高収量で得られた。同組換え体につき、赤血球凝集活性試験に供した結果、同組換え体は強い凝集活性(レクチン活性)を示すことが見出され、さらにその糖阻止プロファイルはMVLのものと同様の傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、これまでにタンパク質レベル・遺伝子レベルともに単離報告がなかった褐藻由来レクチンの同定および性状解析を目指し、本年度は網羅的に褐藻レクチンを単離・同定することを目的とした。すなわち、①TMTシステムを用いた網羅的蛋白質定量解析、②二次元ディファレンスゲル電気泳動解析、③ゲノム情報からの推定レクチン遺伝子探索、および④クロマトグラフィーを用いた分画・精製、の4つの手法を駆使し、褐藻レクチンの多角的・網羅的な探索・同定を試みた。①②によるレクチン探索を試みたところ単離には至らなかったが、一方、③褐藻ゲノムを対象としたin silicoスクリーニングにより、複数種のレクチン様タンパク質遺伝子配列を抽出するとともに、そのうち1種につき組換え体を調製し、その赤血球凝集活性(レクチン活性)を確認した。すなわち、褐藻由来レクチンの同定ならびにその活性組換え体の調製に初めて成功した。④については十分な検討には至っていないものの、次年度も継続して行うことを計画している。以上、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で行った4手法による網羅的なレクチン探索を継続して行うとともに、得られたレクチン情報をもとに以下の生化学的・栄養学的特性に着目した機能解析を試みる。すなわち、単離した褐藻レクチンもしくはその活性組換え体につき、種々の糖化合物を用いた赤血球凝集阻止試験に供し糖結合性を調べるとともに、40種類の蛍光標識糖鎖を用いた遠心限外ろ過-HPLC法により、糖鎖結合特異性を解析する。また、消化酵素耐性試験や熱安定性・pH安定性試験に供し、レクチンの経口摂取後の挙動を推察する。 また、腸管吸収モデルとして有用な、小腸様機能を発現する腸管上皮細胞株、Caco-2細胞を用いて褐藻レクチンの腸管透過性について解析する。すなわち、トランズウェルの透過性膜上に腸上皮様に分化させたCaco-2細胞を調製し、管腔側にレクチンを添加後、基底膜側へ透過したレクチン量を、別途調製した特異抗体を用いたウエスタンブロットおよびELISA法により検出・定量することで腸管透過性を評価する。さらに、紅藻・緑藻・藍藻由来既知レクチンには、癌細胞に対して増殖抑制作用を示すものや、癌マーカーと特異的に結合するものなどがあることから、各種癌由来培養細胞を細胞バンク等から入手し、これらに対する増殖抑制能およびアポトーシス誘導性等について調べる。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額」が生じた理由として、ドライ実験であるin silicoスクリーニングに比較的多くの時間を費やしたことが挙げられる。同実験は本年度の目的達成に大きく寄与したため、本年度の予算執行上、問題ないものと考える。また、当初計画のとおり、前年度で行った4手法による網羅的なレクチン探索を継続して行うため、「次年度使用額」はその消耗品購入費用に充てる。
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Research Products
(1 results)