2018 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive investigation for the lectins from brown algae, based on their genome information
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17K15321
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平山 真 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (40535465)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レクチン / 藻類 / 褐藻 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、オキナワモズクゲノム配列中に藍藻由来高マンノース型(HM)糖鎖特異的レクチンMVLと高い相同性を示すレクチン様タンパク質遺伝子を見出し、その活性組換え体rCoMVLの調製に成功した。今年度はまず、蛍光標識HM糖鎖を用い、遠心限外ろ過-HPLC法によりrCoMVLと同糖鎖との結合を調べた。その結果、rCoMVL-糖鎖間の結合を認めなかった。その要因として、糖鎖の還元末端GlcNAcが蛍光標識(ピリジルアミノ化)により開環していることが考えられた。そこで、rCoMVLが有するTrp由来蛍光スペクトルを測定し、無標識HM糖鎖とrCoMVL混合後の同蛍光強度の減退を指標にレクチン-糖鎖間の結合を調べた。その結果、添加糖鎖濃度依存的に蛍光強度が減少したことから、rCoMVLは還元末端GlcNAcの環状構造が保持されたHM糖鎖と結合することが示唆された。 次に、褐藻藻体からのレクチン獲得方法を検討した。一般にレクチンは、結合糖化合物をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィー(AC)により精製されるが、糖鎖に対して高い親和性を示す藻類レクチンは、リガンド結合後の溶出が極めて困難で、ACによる精製は不適である。褐藻レクチンも高親和性である可能性を考え、藍藻由来高親和性レクチンOAAをモデルに、ACにおける溶出条件、特に加温の影響について検討した。その結果、リガンド固定化カラムに結合したOAAの溶出量が溶出温度依存的に増加することを見出した。さらに、高親和性レクチンを含む緑藻・紅藻それぞれ1種由来抽出液を対象に、ACにおいて加温によるレクチン溶出を試みたところ、両種とも60℃下1 M Man含有溶媒による溶出でレクチンが得られた。加温およびリガンド構成単糖添加による溶出を行うことで、ACにより高親和性レクチンの精製可能であることが示唆され、褐藻レクチン単離への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、これまでにタンパク質レベル・遺伝子レベルともに単離報告がなかった褐藻由来レクチンの同定および性状解析を目指し、網羅的に褐藻レクチンを単離・同定することを目的としている。すなわち、①TMTシステムを用いた網羅的蛋白質定量解析、②二次元ディファレンスゲル電気泳動解析、③ゲノム情報からの推定レクチン遺伝子探索、および④クロマトグラフィーを用いた分画・精製、の4つの手法を駆使し、褐藻レクチンの多角的・網羅的な探索・同定を試みた。ここで、①②によるレクチン探索を試みたものの、明瞭な結果は得られず単離には至らなかったが、一方、前年度において③褐藻ゲノムを対象としたin silicoスクリーニングにより、複数種のレクチン様タンパク質遺伝子配列を抽出するとともに、そのうち1種につき組換え体を調製し、その赤血球凝集活性(レクチン活性)を確認した。すなわち、褐藻由来レクチンの同定ならびにその活性組換え体の調製に初めて成功した。④については今年度において検討を行い、汎用性のある単離方法が見出された。次年度においても継続して行うことを計画している。褐藻レクチンの単離・同定方法について、上記①②は、種々検討の結果、実現可能性が低いと判断し、今後は③④に注力して研究を進め、これらにより得られたレクチンを対象に、その性状解析を進める予定である。 以上、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度見出した、アフィニティークロマトグラフィーを用いた高親和性レクチン単離法を適用し、褐藻藻体からのレクチンの単離を行う。これにより得られたレクチン、もしくは先に調製に成功したrCoMVLを用い、腸管吸収モデルとして有用な、小腸様機能を発現する腸管上皮細胞株Caco-2細胞を用いて褐藻レクチンの腸管透過性について解析する。すなわち、トランズウェルの透過性膜上に腸上皮様に分化させたCaco-2細胞を調製し、管腔側にレクチンを添加後、基底膜側へ透過したレクチン量を、別途調製した特異抗体を用いたウエスタンブロットおよびELISA法により検出・定量することで腸管透過性を評価する。さらに、紅藻・緑藻・藍藻由来既知レクチンには、癌細胞に対して増殖抑制作用を示すものや、癌マーカーと特異的に結合するものなどがあることから、各種癌由来培養細胞を細胞バンク等から入手し、これらに対する増殖抑制能およびアポトーシス誘導性等について調べる。
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Causes of Carryover |
おおむね計画通りに研究を遂行したものの、一部未実施の実験もあり、比較的少額(71,723円)の「次年度使用額」が生じた。2019年度は、当初計画のとおり、網羅的なレクチン探索およびレクチンの性状解析を継続して行うため、「次年度使用額」はその消耗品購入費用に充てる。
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Research Products
(1 results)