2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒトデ幼生のマクロファージ遊走阻止因子による炎症制御機構の解明
Project/Area Number |
17K15324
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 亮平 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (90458951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 比較免疫 / ヒトデ幼生 / サイトカイン / 細胞移動 / 共発現ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
【概要】 最も原始的なサイトカインの一つと考えられているマクロファージ遊走阻止因子(Macrophage m igration Inhibitory Factor: MIF)は、進化的に保存された炎症反応のキーレギュレーターである可能性が指摘されている。一方で、進化的に保存された受容体は同定されていない。代表者はこれまで 、棘皮動物ヒトデの幼生の免疫細胞から2種のMIFを同定し、両者がそれぞれ走化性因子(ApMIF2)、走化性阻止因子(ApMIF1)として免疫細胞の移動を制御していることを明らかにした。本研究ではこの先行研究を基盤とし、進化的に保存されたMIF受容体とその下流シグナルの同定を目的としている。 受容体の探索は、還元剤で切断可能な細胞膜不透過性クロスリンカーを用いて、in vitroで2種のHisタグ融合MIFとヒトデ幼生の免疫細胞表面の受容体をそれぞれ架橋し、精製した膜画分をHisタグに対するアフィニティクロマトグラフィーに供することで行った。これまでのところ、抗Hisタグ抗体を用いたウエスタンブロットにより、ApMIF1と受容体候補の複合体が90 kDa程度のバンドとして得られている。一方、ApMIF2の受容体候補は検出できていない。 下流シグナルの探索は、ApMIF2添加による免疫細胞の移動速度の上昇時と、その後のApMIF1添加による移動速度の低下時に経時的にサンプリングした免疫細胞のRNA-seq解析を通して行った。発現変動遺伝子として得られた約1400個の遺伝子を用いて共発現ネットワークを構築し、その中から2種のMIFが属するコミュニティを抽出した。抽出したコミュニティでエンリッチメント解析を行ったところ、MAPK経路とPI3K/Akt経路が有意に濃縮されていた。さらに、各コミュニティから2種ずつ、受容体候補になり得る遺伝子も見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
受容体候補の検出は今年度中に完了する予定であったが、ApMIF1の受容体候補は検出できているものの、ApMIF2の受容体候補については検出できていない。 一方で、RNA-seqの解析データから受容体候補として2種ずつ遺伝子を見いだせており、架橋剤を用いた生化学的アプローチと並行して受容体探索を進めているため、研究遂行において問題になるほどの遅れではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
受容体探索が難航している理由の一つが、MIFが単独で二量体、三量体を形成してしまうことである。これがアフィニティ精製産物のウエスタンブロットにおける複合体検出を困難にしている。この課題を解決するため、今後はビオチンラベル転移化合物であるSulfo-SBEDによる光反応架橋を行い、Hisタグによる複合体検出ではなくビオチンで受容体を直接検出する方法で研究を進める。同時に、RNA-seq解析により得られた受容体候補のノックダウンも並行して進めることで受容体の同定を目指す。 MIFの下流シグナルについては、候補として得られたMAPK経路及びPI3K/Akt経路の阻害剤が、それぞれのMIFで処理した免疫細胞の移動行動に及ぼす影響を検証し、実際にMIFの下流で機能しているかを明らかにする。
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