2018 Fiscal Year Annual Research Report
Predicted Recruitment Levels of Japanese Sand Lances Based on the Physiological Factors of Estivation and Reproductive Skips
Project/Area Number |
17K15325
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
阿見彌 典子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20588503)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | イカナゴ / 性成熟 / 地域差 |
Outline of Annual Research Achievements |
瀬戸内海に生息するイカナゴは当歳で9割が性成熟するが,仙台湾に生息する個体は約2割のみが成熟した.その際,下垂体内における生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)量は,瀬戸内海イカナゴ(瀬戸内海群)および仙台湾イカナゴ(仙台湾群)ともに11月から上昇した.しかし,11-12月の瀬戸内海群のGnRH量は仙台湾群より有意に高く,水温低下に伴って下垂体GnRH量は上昇するものの,仙台湾では,その絶対値がある一定以上に達しないことが,西日本と東日本海域群の当歳魚での成熟率の違いを生じさせている一因であることが示唆された. 瀬戸内海群(当歳魚)の夏眠期中盤に水温を27℃から28℃に上昇させた結果,斃死個体が出現した.1日のみの水温上昇にも関わらず約2/3の個体が斃死した.性成熟に関してはコントロール群と同様に性成熟を開始したもののGSIは高水温群で低かった.これら一連の水温調節実験により,イカナゴにおいて28℃という高水温は短時間であっても生残率を急激に低下させるとともに,繁殖スキップを引き起こすことが示唆された.高水温を経験することで親魚の生存率が低下するとともに,親魚の再生産への寄与率の低下が資源量の減少に影響しているのかもしれない.一方,夏眠を短期化させても,性成熟に影響は与えなかった.しかし,岩手県沿岸に生息するイカナゴ属魚類(2歳魚)における夏眠短期化実験では,繁殖スキップ個体が多く確認された. 以上より,日本沿岸に生息するイカナゴ属魚類の繁殖生態(初回成熟年齢など)における地域差が明らかとなり,水温の影響を受けて繁殖スキップを行うこと,さらにその影響には地域差が存在する可能性が示唆された.したがって,有効な資源管理策の導入のためには,各海域ごとの繁殖生態の違いを詳細に検討し,各海域ごとの対応策が必要である.
|