2017 Fiscal Year Research-status Report
農産品に対する消費者ニーズを解明する費用対効果の高い新たな分析枠組の確立
Project/Area Number |
17K15327
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢野 佑樹 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (40618485)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ネットワーク分析 / テキストマイニング / チャット形式 / 植物工場 / 葉物野菜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず植物工場野菜に対する消費者イメージに関する文献調査を行うと同時に、ネットワーク分析の最新動向を概観した。植物工場野菜のイメージに関する研究は少なく、特に最近開発が進んでいる「栄養成分を高めた植物工場野菜」に対する消費者意識・評価に関する研究は見当たらなかった。そこで、室内で栄養価を高めた葉物野菜に対する評価とその理由について、Web掲示板を用いて調査を実施し、851名の消費者から迅速に回答を得た。得られた文章データを語の共起ネットワークによって分析した結果、以下のことが明らかになった。第一に、栄養価を高めた植物工場野菜に対する評価が低い人たちは、「自然でない」「人工的」といったイメージを持っており、人体への影響等について不安を抱いている割合が高かった。第二に、評価の高い人たちは、「サプリメントよりも体に良さそう」といったイメージを持っており、積極的に摂取したいと考えていることがわかった。第三に、中立的な回答をした人たちには、味や値段を確かめてみたいという意見が多かった。また、対応分析を行った結果、高齢の方ほどネガティブイメージを持つ傾向があり、男性の方が中立的な意見の人が多い傾向がみられた。更に、イメージ形成要因を把握するために、チャット形式調査によって、男女27名のモニターに対して1対1のインタビューを実施した。その結果、栄養価を高める栽培方法に関する知識が十分でないことが、特殊な操作や薬の添加等を行っているのではないかといった誤解や不安を招く一因であることが判明した。また、太陽光を浴びることが健康的・活動的であるといった一般的なイメージも、室内栽培の印象を悪くしている原因であることがわかった。農産品に対するイメージを解明するための手法として、Web掲示板・チャット形式調査によるデータ収集と共起ネットワーク分析を組み合わせる方法が有用であることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、インターネット掲示板で消費者モニターに植物工場野菜に対するイメージを尋ね、得られた大量のテキストデータを共起ネットワーク等で分析することにより、頻出イメージとその個人属性との関連性を明らかにすることができた。また、予定通りチャット形式の調査を実施し、イメージの形成要因を把握することができた。オンラインでのインタビューでは、思ったよりもメッセージのやり取りに時間がかかり、ややサンプルサイズが小さくなってしまったものの、新しいアプローチの有用性が確認できたことから、研究は概ね順調に進捗していると判断させる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、計画通り植物工場野菜に対する消費者ニーズを、Webアンケート調査およびチャット形式の調査によって解明する。共起ネットワーク分析では、近年注目が高まっているコミュニティー抽出法を用いて、テキストデータ内の話題把握を試みる。最終年度は、植物工場野菜に関する情報提供の方法について整理するとともに、新しい調査・分析手法の手順や注意点等をまとめる。当初の計画から大きな変更はないが、近年は海外でも植物工場野菜や機能性野菜が普及しているため、余裕があれば海外調査および英文の分析などについても検討していきたい。
|
Causes of Carryover |
申請当初予定していた謝金や論文投稿・掲載料、英文校閲料等の支出が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。平成30年度に予定している調査において、より質の高いデータを多く得るために使用したい。
|
Research Products
(2 results)