2018 Fiscal Year Research-status Report
農産品に対する消費者ニーズを解明する費用対効果の高い新たな分析枠組の確立
Project/Area Number |
17K15327
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢野 佑樹 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (40618485)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物工場 / 葉物野菜 / ネットワーク分析 / 消費者ニーズ / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、植物工場野菜に対する不安やニーズに関する文献調査を行った。また、統計ソフトRによる最新のネットワーク分析手法の動向を調べ、文章データを語の共起ネットワークで分析する際に、階層的コミュニティ検出法が適応可能かどうかを検討した。これまでの調査・研究結果から、植物工場野菜に対して評価の低い人達は、「自然でない」「栄養価が低い」といったイメージや、人体への影響について不安を抱いていることがわかっているが、そのような不安を感じる理由について詳しく調査した研究は見当たらなかった。また、葉物野菜を選ぶ際に重視することについて探った研究もなかった。そこで、まずWeb掲示板およびチャット形式調査によって、植物工場野菜を食べることに対する不安度とその理由を詳しく探った。その結果、以下のことが明らかになった。第一に、程度の差はあるものの、回答者の約37%は植物工場野菜に対して何らかの不安を抱いていることが判明した。第二に、不安度の高いグループでは、「栄養価が心配」という意見が多かったが、これは回答者が「植物の成長にとって人工光は本当に太陽光の代わりになるのか」といった疑問を抱いていることが原因であることがわかった。第三に、そのようなグループでは「体への悪影響が心配」といった意見も多く、これは回答者が植物工場のことをよく理解しておらず、その生産方法に対して不信感を抱いていることが原因であることが明らかになった。また、植物工場に関するWebアンケートを実施した結果、思ったよりも生産方法に関する理解度が低いことが判明した。さらに、消費者が葉物野菜を選ぶ際に重視する属性は、鮮度、価格、産地・生産者であることがわかった。以上の結果から、人工光源下における植物の光合成や成長メカニズムに関する情報や、植物工場の生産工程と安全性に関する情報を提供していくことが必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、オンライン掲示板とチャット形式の調査を実施した。これまでの調査・研究によって、消費者が植物工場野菜に対して不安を抱いていることがわかっていたため、まずはその理由について深く探り、今後消費者にどのような情報を提供していくべきかについて明らかにすることができた。また、Webアンケート調査を実施し、葉物野菜の購入時に消費者が重視する点(ニーズ)や、植物工場に関する理解度等についても明らかにすることができた。方法面では、世界的に広く使用されている統計ソフトRを用いて、ネットワーク分析をテキストデータに適用することを試み、その手順やコマンドをまとめることができた。植物工場野菜の属性に対するニーズについては更なる調査が必要であるものの、不安や誤解を払拭するために必要な情報提供の在り方や、新しい分析手法(階層的コミュニティ抽出法)の有用性が確認できたことから、研究は概ね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は最終年度であるため、植物工場野菜に対する消費者の不安やニーズの分析を完了させ、消費者にとって望ましい情報提供の方法と新手法の応用可能性についてまとめる。共起ネットワーク分析では、これまで不可能であったオーバーラップを許したコミュニティ抽出法の適用可能性を探る。後半には、新しい調査・分析手法の手順や注意点等を論文や報告書などにまとめる。当初の計画から大きな変更はないが、もし余裕があれば、海外における植物工場に対する消費者の意識調査や、英文テキストの計量分析、研究成果発表などについても検討していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、人件費・謝金の支払いが必要なかったのと同時に、予定していたよりも旅費がかからなかったため、次年度使用額が0より大きくなった。その分、チャット形式の調査を延長し、より多くのサンプルを収集したいと考えている。また、余裕があれば、海外において調査を実施することも考えている。
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Research Products
(4 results)