2019 Fiscal Year Research-status Report
農産品に対する消費者ニーズを解明する費用対効果の高い新たな分析枠組の確立
Project/Area Number |
17K15327
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢野 佑樹 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (40618485)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植物工場 / 消費者意識 / 情報提供 / テキストマイニング / 共起ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、チャット形式の調査を継続して行い、植物工場野菜に関する情報ニーズを深く探った。その結果、人工光を用いた栽培方法に関する情報、特に「人工光でも野菜がしっかり育つ理由」を説明する必要があることがわかった。また、信頼できる情報源としては、食や農業の専門家や生産者自身、公正な研究機関が多く挙げられた。そこで、次に人工光と植物の成長に関する情報提供の効果を検証するために、Webアンケートを実施し、961名の消費者から回答を得た。具体的には、情報提供の有無およびLED照明の色によってグループを6に分け、室内でレタスを栽培している写真を提示し、その栽培環境に対する好感度を答えてもらった。得られたデータを統計的手法によって分析したところ、以下のことが明らかになった。第一に、情報提供が好感度に与える効果は、与えられた情報に対する信頼度に大きく左右されることがわかった。提供情報への信頼度が高い場合は好感度が大きく向上した一方で、信頼度が低い場合は逆効果であった。第二に、提供情報への信頼度が高い場合、従来の白色照明と比べて、赤色と青色のLEDを組み合わせた赤紫色の光で野菜を栽培している写真を提示した場合に、より情報提供効果が高くなることが明らかになった。第三に、新しい技術は食品の自然のままの品質を損ない、健康や環境に良くない影響を及ぼすと考える回答者ほど好感度が低い傾向が見られた。この傾向は、二部グラフによる共起ネットワーク分析の結果とも一致するものであった。以上の結果から、生産者や複数の専門家から人工光でも野菜がしっかり育つ理由について解説してもらい、それをマスメディアやソーシャルメディアを通じて広く発信していくことで、植物工場野菜に対する消費者の抱くイメージを改善できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
チャット形式の調査については計画通り行うことができたが、情報提供効果を検証するためにWebアンケートを実施する必要性が生じ、その準備と実施、分析、結果の取りまとめに思ったよりも時間がかかった。そのため、植物工場野菜に関する情報の有効な提示方法は計画通り明らかにできた一方、研究成果の投稿、新しい調査・分析手法の手順や注意点のまとめが遅れている。また、計画当初はまだなかった「プロフェッショナル掲示板」のサービスが最近開始され、これを用いてより研究成果の充実を図るために計画の変更が必要になった。この調査の準備には時間を要するため、年度内に完了させることは難しく、翌年度に変更せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、従来の掲示板と比べて段違いに画像や文章説明を盛り込みことが可能である「プロフェッショナル掲示板」のサービスを用いて、なじみの薄い農産物の特徴を消費者に伝えた上で、そのイメージを探る。農産物の候補としては、既にある程度市場に浸透してきている植物工場野菜ではなく、今後植物工場でも導入が進むと考えられるゲノム編集技術を用いた農産物を検討している。その後、このプロフェッショナル掲示板を用いたテキストデータ分析(共起ネットワーク分析)の有用性を検討し、新しい調査・分析手法の手順や注意点等を論文や報告書などにまとめる。
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Causes of Carryover |
本研究では、当初の計画通り、調査会社の運営するウェブサイトに掲示板を設置し、多くの消費者に植物工場野菜のイメージを尋ね、得られたテキストデータを分析することにより頻出イメージとその個人属性との関連性を明らかにしてきた。また、チャット形式の調査手法やWebアンケートを利用し、消費者のイメージや価値意識を深く探ることで望ましい情報提供のあり方を考察してきた。計画は概ね順調に実施してきたが、当初はまだなかった「プロフェッショナル掲示板」のサービスが最近開始され、これを用いてより研究成果を充実を図るために、研究計画の変更が必要になった。プロフェッショナル掲示板では、通常のものとは段違いに画像や説明文章を盛り込むことができるため、なじみの薄い農産物の特徴などを消費者により深く伝えることができると考えられる。しかし、この調査の準備には時間を要するため、調査実施・分析・成果報告まで年度内に完了させることは難しく、翌年度に変更せざるを得なくなった。
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