2017 Fiscal Year Research-status Report
複数の数理モデルの有機的連携による健全な海域環境の創出に向けた研究
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17K15347
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| Research Institution | Kyushu University |
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Principal Investigator |
田畑 俊範 九州大学, 農学研究院, 助教 (80764985)
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2017-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | 有明海 / 博多湾 / 栄養塩統合管理 / 数理モデル |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は，博多湾および有明海それぞれの海域に適した水環境保全と持続的な漁業生産の両立に向けたロードマップを示すことである．本年度では，有明海に対して，貧酸素水塊の再現モデルを構築，河川流入負荷が海域環境に及ぼす影響評価，および二枚貝漁獲量の激減の要因について数理モデルを用いて検討を行った．博多湾に対しては，集中豪雨による淡水の動態解析を行った．
まず，浮遊系－底生系結合マルチボックス生態系モデルおよび３次元流動・拡散モデルの開発を行った．その際，鉛直方向にはσ座標系を適用し，干潟の干出の計算にWet and Dry Schemeを用いた．前者のモデルでは，長期的な海域の栄養塩の挙動追跡を可能とするモデルであり，後者は海域の流動・水温・塩分を再現するモデルである．そして，この２つのモデルに加え多変量解析や機械学習を用いて有明海における解析を行った．浮遊系―底生系結合マルチボックス生態系モデルを用いてシナリオ分析を行った結果，河川流入負荷が減少した際に貧酸素水塊の発生が抑制できること，養殖ノリへの施肥の海域への影響は小さいことが示された．また，３次元流動・拡散モデルに溶存酸素モデルを組み込むことで貧酸素水塊の動態解析を行った．そして，有明海における過去30年の水質・漁獲量のデータについて，クリギングを援用したクラスタ分析を行い，海域環境の変遷について考察を行った．さらに同データを機械学習の一種であるニューラルネットワークモデルに学習させることで二枚貝漁獲量の減少要因について検討を行った．博多湾においては，集中豪雨による突発的大量な淡水流入が海域に与える影響について検討を行う目的で，既存の２次元単層モデルにより淡水の挙動追跡を行った．その際，各河川にタンクモデルを構築することで集中豪雨による淡水流入を再現した．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は，複数の数理モデルの有機的連携により有明海および博多湾の健全な海域環境の創出を目指すものである．そのため，本研究ではモデルの作成が目的達成に向けた鍵となる．本研究で使用する数理モデルは，多変量解析，ニューラルネットワークモデル，マルチボックス生態系モデル，３次元生態系モデルの４つである．
本年度では，３次元流動・拡散モデル，浮遊系－底生系結合マルチボックス生態系モデルの構築を行った．これらのモデルを，有明海を中心に適用した結果，それぞれが良好な精度を示したことから精度の高いモデルの構築に成功したといえる．また，これらのモデルに加え多変量解析や機械学習を用いて有明海の貧酸素水塊の挙動追跡や河川流入負荷や養殖ノリへの施肥が海域に及ぼす影響評価，海域環境と漁業生産の関係について解明した．本年の成果を基に次年度以降では，３次元生態系モデルの開発を行い，最終的にすべてのモデルによる有明海と博多湾それぞれにおける総合的な栄養塩統合管理手法について考察していく．３次元生態系モデルの開発にはその大量のパラメータの同定に非常に時間がかかるが，本研究では本年度構築したマルチボックス生態系モデルで決定したパラメータを使用することでその時間の短縮を図ることが可能である．以上より，本年度はおおむね順調な進捗状況であるといえる．
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| Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では，有明海に適用したモデルを博多湾に適用する．また，３次元生態系モデルの構築も目指す．
まず，博多湾のデータベースの構築を行う．海域の水質データや汚濁負荷流入データ，淡水流入データについて福岡市港湾局および環境局より入手し，既に所持している海底地形データと併せてGISにより精緻なデータベースの作成を目指す．そして，有明海に適用済みであるマルチボックス生態系モデルを博多湾に適用する．その際，入手した水質データに対して多変量解析を施すことによりボックスの区分位置について検討を行う，また，遺伝的アルゴリズムを援用することで効率的にパラメータの同定を行う．また３次元流動・拡散モデルの博多湾における再現性についても検討を行う．その一方で，有明海における３次元生態系モデルの構築についても進める．前年度に構築した浮遊系－底生系結合マルチボックス生態系モデルにより決定したパラメータを利用することで時間の短縮を図る．平成31年度では，これら構築した複数の数理モデルを用いて博多湾および有明海それぞれの海域に適した水環境保全と持続的な漁業生産の両立に向けたロードマップを示す．
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