2018 Fiscal Year Research-status Report
可視・近赤外およびテラヘルツスペクトルによる植物葉の温度環境ストレス状態の把握
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17K15353
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 大太郎 東北大学, 農学研究科, 助教 (20610869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スペクトル解析 / 乾燥ストレス / 低温ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物葉が生育中にさらされるストレスによって併発する変化を分光学的手法を用いて、追究することで、ストレス評価マーカーを見出すことを目的としている。本年度は、乾燥と低温乾燥によって生じる植物体のスペクトル応答差異を見出すため、チャンバー内にシリカゲルいれて乾燥条件下に置かれた植物群落と低温過程にさらされた植物群落をそれぞれ0-24時間程度継続的に可視400-1100nmと赤外4000-100㎝-1のスペクトルをそれぞれ測定した。測定は、群落と個葉それぞれに対して実施した。可視データは群落を中心に測定を実施したが、スペクトル解析によって、以前シフトが見られたレッドエッジ付近のピークシフトが確認されなかった。また強度変化もほとんど起こっておらず、より低温でのストレスを与えることで応答の明確化をはかる必要がある。赤外の指紋領域(1000㎝-1)付近には、複数のピークが生じることが明らかとなったが、ストレスに対して敏感に変化するピークは認められず、また低温にした場合でもその変化は顕著とはいえなかった。また、特徴的なデータとして、3200㎝-1付近に現れる水由来のテラヘルツ帯に近い、1000㎝-1付近のスペクトルでは、低温環境下においてわずかなスペクトル変化を生じた。このピークは、水の束縛回転振動を反映している可能性があることから、より詳細な検討によってストレス応答のマーカーとなりえると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
可視域400-1100nmから、低振動数赤外帯(4000-100cm-1)までの低温環境下での植物葉のスペクトル挙動を連続的に調査することで、温度環境ストレスと乾燥ストレスに関するスペクトル変化の差異が表せる可能性が見いだせたことから研究は順調に進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究において、部位によるストレス応答差異の可能性がみとめられたため、次年度は、イメージングによるストレス応答の表現について近赤外イメージングを中心に検討していく必要がある。イメージングについては、2014年から実施した乾燥ストレスのみに着目した実験において、研究者らによって新開発された装置D-NIRsを用いた研究の実績を有している。本装置の農業分野への利用は、本研究に対してのみでなく、他の農業工学関連の有効性を見出す可能性を秘めていることから、大規模な展示会等で紹介することで、情報収集を行っていく。
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Causes of Carryover |
所属研究室における使用機材を利用することで、消耗品費の利用が抑えられたことに加え、国際学会参加を最終年度にすることにしたことから旅費も次年度に使用可能となった。最終年度において、FACSS2019での研究成果報告と情報収集に利用し、またより正確な測定を実施するための精密天秤の購入に充てることとする。
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