2017 Fiscal Year Research-status Report
I型ネコ伝染性腹膜炎ウイルスの利用するウイルス受容体の同定
Project/Area Number |
17K15372
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
土岐 朋義 北里大学, 獣医学部, 助教 (40792396)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ネココロナウイルス / Sタンパク質 / ウイルス受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)はイエネコおよびネコ科動物の致死性ウイルス感染症である。FIPの原因ウイルスであるFIPウイルス(FIPV)にはI型とII型の2つの血清型が存在し、野外においてはI型FIPVが優勢である。しかし、II型FIPVと比較してI型FIPVは株化細胞における増殖性が悪いため、実験的取り扱いが難しい。このような理由から、I型FIPVは研究に用いられることが少なく、I型FIPVの感染機構には不明な点が多い。特に、I型FIPVの吸着時に利用するウイルス受容体はII型FIPVとは異なることが証明されているが、その分子は未だ同定されていない。I型FIPVの受容体が同定できれば、I型FIPVの感染・増殖メカニズムの解明が急速に進展し、治療薬および予防薬の開発が大きく前進することが期待される。そこで申請者はI型FIPVの受容体を同定することとした。 I型FIPVの受容体探索はプルダウン法により行う。平成29年度はプルダウン法のベイトとして用いるタグ付I型FIPV Sタンパク質の発現系を構築した。I型FIPV Sタンパク質のレセプター結合領域を含むS1領域をタグと融合させた組換えタンパク質を哺乳細胞の培養上清中に一過性に発現させた。FIPV感染猫血清を用いたwestern blot解析を行ったところ、精製した組換えタンパク質はFIPV Sタンパク質としての抗原性を有することを確認した。また、組換えタンパク質は天然型のFIPV Sタンパク質と同様にホモ三量体構造を形成している可能性が示唆された。今後、組換えタンパク質のFIPV感受性細胞に対する結合性を確認し、受容体の分離・同定を行っていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度はプルダウン法のベイトとして用いるタグ付I型FIPV Sタンパク質の発現系を構築した。当研究室で保有するFIPV KU-2株のS遺伝子のシグナル配列を用いて発現ベクターを構築したところ、分泌タンパク質として哺乳細胞に発現させることが出来なかった。そこで、異なるタンパク質の分泌シグナル配列を付加した発現ベクターに再構築したところ、分泌タンパク質として発現させることに成功した。以上のことから当初の予定より若干の遅れが生じたものの、平成30年度は引き続き発現させた組換えFIPV Sタンパク質を用いて受容体の分離・同定を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はプルダウン法を応用したI型FIPVに対するウイルス受容体の分離・同定を行う。具体的には、精製したタグ付S1領域(ベイト)を精製用セファロースゲルに結合させ、そこにI型FIPV感受性細胞のライセートを反応させて、ベイトと結合するタンパク質を精製する。精製されたタンパク質が得られれば、質量分析による解析を行い、得られた配列と類似する配列から候補となるタンパク質を推定する。さらに、そのウイルス受容体の候補となるタンパク質の遺伝子をクローニングし、株化細胞にトランスフェクションすることでI型FIPVへの感受性が変化するか否かを確かめことでウイルス受容体を証明する。
|