2018 Fiscal Year Research-status Report
Isolation of cancer stem cells and radiosensitizing effects of mTOR inhibitors in canine tumor cell lines.
Project/Area Number |
17K15375
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
細谷 謙次 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (50566156)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Metformin / がん幹細胞 / 分子標的療法 / 放射線治療 / 活性酸素 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①犬腫瘍細胞株からのがん幹細胞(CSC)分離法の確立、②CSCの放射線耐性の証明、③MetforminのCSC放射線増感効果の証明とその機序としてmTOR経路阻害の関与を調査、④Metoformin以外のmTOR阻害剤のCSC放射線増感効果の解析、および⑤犬におけるmTOR阻害剤の薬物動態解析、であった。 現時点において、すでに①CSCの分離特殊培養法は試行した4細胞株すべてにおいて確立済み(第160回 日本獣医学会にて発表、Veterinary and Comparative Oncology[VCO]に掲載)、②CSCが放射線耐性を有することを確認(第160回 日本獣医学会で発表、VCOに掲載)、③MetforminがCSCの放射線抵抗性をリバースすることを確認している。さらに、③の実験において、当初の仮説と異なり、CSCの放射線抵抗性がmTOR経路に起因するものではなく(第161回 日本獣医学会、米国Veterinary Cancer Society年次大会で発表)、CSC特有のミトコンドリアによる呼吸能とATP産生能の亢進によるものであること、MetforminがCSC特異的にミトコンドリア活性を抑制することで放射線増感効果を示すことを確認した(第21回癌治療増感シンポジウムで発表)。また、並行して作成したmTOR/PI3K阻害薬耐性株において、ABCB1-⊿1蛋白の高発現が薬剤耐性の獲得および細胞の幹細胞性の誘導に関わっていることを確認した(第77回 日本癌学会にて発表)。以上より、⑤の実験は予定を変更して取りやめ、代わりにミトコンドリアを標的としたCSC特異的な放射線増感薬の同定を新たな目的に加えて実験を継続している(後述)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①犬腫瘍細胞株からのがん幹細胞(CSC)分離法の確立、②CSCの放射線耐性の証明、③MetforminのCSC放射線増感効果の証明とその機序としてmTOR経路阻害の関与を調査、④Metoformin以外のmTOR阻害剤のCSC放射線増感効果の解析、および⑤犬におけるmTOR阻害剤の薬物動態解析、であった。現時点において、すでに①CSCの分離特殊培養法は確立済み、②CSCが放射線耐性を有することを確認、③MetforminがCSCの放射線抵抗性をリバースすることを確認している。さらに、当初の仮説と異なり、CSCの放射線抵抗性がmTOR経路に起因するものではなく、CSC特有のミトコンドリアによる呼吸能とATP産生能の亢進によるものであること、MetforminがCSC特異的にミトコンドリア活性を抑制することを確認した。また、並行して作成したmTOR/PI3K阻害薬耐性株において、ABCB1-⊿1蛋白の高発現が薬剤耐性の獲得および細胞の幹細胞性の誘導に関わっていることを確認した。以上より、当初3年間で計画していた実験計画の大部分を終了している(⑤の実験は予定を変更して取りやめ)。計画作成時に研究対象と考えていたmTOR/PI3K経路の関与が否定されたため、代わりにミトコンドリアを標的としたCSC特異的な放射線増感薬の同定を新たな目的に加えて実験を継続している。その一環として、本研究の①で確立した培養系よりさらに純度の高いCSCの分離法および生体内で形成された腫瘍塊中でのCSCの可視化を目的に、蛍光色素遺伝子を導入した、蛍光CSC細胞株の樹立を試みており、すでに2細胞株においてCSCと思われるSubpopulationの発光を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に盛り込まれていた項目は研究より早期に実験が終了し、また当初関与が想定されていたmTOR/PI3K経路のCSC放射線抵抗性への寄与が否定的であることを受け、今後はミトコンドリア呼吸鎖阻害薬のCSC放射線増感剤としての可能性を追求する方針としている。また、ここまでに実験において、①で確立したCSC分離培養法では、得られるCSCの純度がこれ以降の実験には不十分であり、真にCSCのみにおける治療反応性を評価できないと考えれたため、さらに高純度でCSCのみを分離する実験系を確立する方針である。具体的には、既存の腫瘍細胞株に遺伝子導入により蛍光色素を発現させ、CSCのみを蛍光発色させる遺伝子組み換え細胞株の樹立を行う予定である。CSCは、正常細胞と比べて極端にプロテアソーム活性が低いことが知られている。この特徴を利用し、プロテアソームで分解されるように配置した蛍光色素遺伝子(Zs-Green)を腫瘍細胞株にレンチウィルスベクターを用いた手法で親細胞株に導入する。正常細胞ではプロテアソーム活性によって分解されるため、発色は認められないが、CSCでは分解されずに緑色の色素が発現し、細胞が自然発光する。この色素自体は細胞の生存性に影響を及ぼさず、一度作成した組み換え細胞株は、in vitroおよびin vivoにおいて永久的にCSCのみが発光する性質を有する。このため、担癌マウスの腫瘍組織内におけるCSCの空間的分布の解析や増感剤を用いた放射線治療後の継時的なCSC数の変化を可視化できるというメリットがある。本研究室では、すでに2細胞株においてこの遺伝子導入手技を実施し、発光細胞の出現を確認している。今後はこの細胞がCSCであることの確認をし、フローサイトメトリー法を用いた発光CSCの単離、およびそれを用いたミトコンドリア機能解析等を実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画が当初予定と若干変更になったことから、使用する消耗品の費用に多少の差額が生じたことによるものである。今年度未使用の52,553円については、次年度の実験において、本報告書前項に記した追加実験の消耗品として使用する予定である。
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