2017 Fiscal Year Research-status Report
MAPK/ERKシグナル伝達経路遮断に基づく犬前立腺癌の新規分子標的治療法の開発
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17K15383
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
小林 正典 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (80600428)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 犬 / 前立腺癌 / 分子標的治療 / MAPK |
Outline of Annual Research Achievements |
犬の前立腺癌は、高齢の雄犬で発生する悪性腫瘍であり、局所浸潤や遠隔転移が高頻度に認められる。犬前立腺癌の治療は、外科療法、放射線療法、および化学療法があるが、これらの治療の有効性は低く、有害な副作用が少ない新規の全身治療法の開発が求められる。BRAFは、RAFタンパク質ファミリーに属するセリン/スレオニンキナーゼであり、MAPK/ERK 経路に関与する。MAPK/ERK 経路の活性化は、細胞の分裂・増殖、分化、血管新生およびアポトーシスなどに関与しており、腫瘍の発生と病態進行において重要な役割を果たしている。近年、犬の前立腺癌において、BRAFの点突然変異が高頻度に発現することが報告された。この遺伝子変異により構造変化したBRAFはMAPK/ERK経路を活性化させて、異常な細胞増殖を惹起する可能性がある。本年度は、以前樹立に成功した犬前立腺癌細胞株CHP-1を用いて、4種のRAF阻害剤(Vemurafenib、Dabrafenib、EncorafenibおよびGDC-0879)の腫瘍細胞増殖抑制効果について検討を行った。結果として、Dabrafenibを除くVemurafenib、EncorafenibおよびGDC-0879では、CHP-1において顕著な細胞増殖抑制効果が認められた。このことか、変異BRAFの存在は犬の前立腺癌において、細胞の増殖や生存に重要な役割を果たしており、犬の前立腺癌における新たな標的治療となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
犬の前立腺癌に対するRAF阻害剤の腫瘍増殖抑制効果に関する検討は順調に進んでいる。加えて、新たに2つの新規犬前立腺癌細胞株の作出を目指し継代培養を行っているところであり、次年度初頭には樹立できる目処がたっており、研究がさらに進展するものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、RAF阻害剤の下流因子であるMEKやERKなどの阻害により、より強い腫瘍細胞の増殖抑制効果が観察されるか検討を行う。また、CHP-1 細胞を皮下に移植した免疫不全マウスを用いて、RAF阻害剤のin vivo における有効性および有効投与量について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
使用物品に関しては、既存の試薬、器具で一部実施できたため次年度使用額が生じた。来年度は試薬、器具の補充が必要になるため、新規購入の予定である。
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Research Products
(1 results)